- ホーム
- 大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり
- 92軒目 「化学調味料が無かったころの四川料理」
東京では辛シビ(麻辣の辛い、シビれる)ブームで、麻婆豆腐や汁なし&汁あり担担麺に絞り込み強烈なインパクトの商品を提供している店が増えています。今回はその逆を行き、独自路線を確立した『飄香(ピャオシャン)』を紹介しましょう。
オーナーシェフの井桁良樹さんは、代々木上原で開業、そんな大きくない店舗ということもあり、“予約の取れないレストラン”としてたいへん人気の中国料理店を経営しておりました。三越銀座に店を構えることになり、「若手料理人の育成の必要性が発生して、人材育成ができる厨房を求めて移転を考えた」と井桁オーナー。
アイランド型の人材育成をしやすい厨房を求めて、縁もゆかりもない麻布十番に移転されました。最初は、売上のアップダウンがあり、苦労されましたが、現在の唯一無二のコンセプト“化学調味料が無かったころの四川料理”で名を馳せるようになりました。
“化学調味料が無かったころの四川料理”と言うのは簡単ですが、その恩恵は大きく、インパクトある味を化学調味料なしで行うにはかなり手間がかかります。例えば、中国式に豚肉もカビ付けして発酵熟成したり、四川地方と気候が違うので100%自家製は難しいものの、豆板醤をある程度店内で作ったり、調味料の多くを店内調理しています。
合理化協会の園部さんと打合せをかねてランチをすることになりました。まずは食前酒に酸梅酒から、スタートです。
医食同源ということで、干し梅などいろいろな薬草が入っております。
紙に包んであるのは、四川式生春巻きです。紙も四川の田舎の風景が書かれているオリジナルのものです。
前菜の盛り合わせは盛りだくさんです。
左上から右に、玉子に見立てたヤマトイモとカボチャ、蒸し茄子~皮蛋と唐辛子のピクルス添え、快味ソースのカシューナッツ、真ん中、黒毛和牛スパイス焼き、酔っぱらい牡丹海老、鮎の香料煮~茗荷のピクルス添え、下段、焼き鴨、名物のよだれ鶏、牛ハチの巣~ピリ辛豆鼓のソースです。
蟹 ふかひれと海老のすり身の煮もの、海鼠、糸瓜が入っております。
大やり烏賊と旬のゴーヤのピクルスの豆鼓炒め。味わい深いです。
大エビのチリソース。サクッとして、ふわっとしていまして、味わいのあるチリソースがさらにひきたてます。
口直し。
メインは、牛すね肉の煮込みです。トマトと丘若芽を添えてあります。
〆は“無化調”汁なし担担麺です。無化調ですが、インパクトがあります。
あの流行の汁なしのしょっぱいのにしょぱっく感じない、後をひく味とはまったく別次元です。
最後に中国茶と、デザートです。
デザートの定番は杏仁豆腐ですが、今日は敢えて、四川甘酒風味のマーラーガオです。サヴァランのようなデザートです。青山椒の香りとオレンジのフローズンヨーグルト添えてあります。