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第十七話 本物は分かる(福山黒酢)

社長の口ぐせ経営哲学

依然続く健康ブームだが、中でも玄米黒酢の人気は徐々に高まっている。
黒酢の本場といえば鹿児島県福山町で、黒酢メーカー7社が製造販売を続けている。
販売競争が続いているが、最後発メーカーで独自の製造販売を展開しているのが
福山黒酢株式会社(鹿児島県福山町、津曲泰作社長)であ る。


同社は機械化された大量生産の商品が出回り始めている現状の中で、
「より伝統的な匠の技を生かした手作りの製法にこだわり、芳醇な香りとコクのあるうま味を持つ本物の味」を追求している。
福山町の地域名からとって、「桷志田(かくいだ)」というブランドで商品を製造販売している。
一般的に1年間の熟成が多いが、2年間の熟成ものを720ミリリットル(3150円)で販売している。


ある時、津曲社長が1本の黒酢と出会い、
「これが本物の黒酢だ」という衝撃を受け、本物を製造できる人物探しを始めた。
それが、黒酢創り40年の第一人者である赤池力さん(黒酢杜氏)と出会った。
津曲社長の熱心な勧めもあって、「伝統的な本物の黒酢作り」が再開された。
「混ぜ物はダメ、本物は分かる」が口ぐせの津曲社長。
「福山町に伝統的な黒酢がなくなってしまう」という危機感と本物志向の津曲社長のこだわりが本物の商品を生み出した。


仕込み用の壷(アマン壷)でじっくり2年間、昼の太陽と夜の冷気にさらされながら、発酵熟成させて仕上げている。
三方を山に囲まれ、平均気温18・7度 の自然環境の中で、杜氏が丹念に
一壷一壷熟成の様子をみながら、1万6000壷の仕上がりを待っている。
鹿児島へ観光した際、製造現場を見学できるスポッ トとして、
黒酢本舗「桷志田(かくいだ)」(平成17年10月1日オープン)を開業している。
醸造所見学、黒酢料理とショッピングが楽しめる新しい観光スポットである。


同社が商品に自信を持っているのは実際に購入して飲んでいる人からの声である。
「黒酢がこんなに甘いなんて」
「飲み口がすっきりしている」
「柑橘系のさ わやかな後口がいい」
「今まで飲んだ黒酢の中で一番美味しい」
といった愛飲者の声を重要視している。
顧客の声こそ繁盛していく重要なカギを握っている。


いまや、黒酢は福山町だけでなく全国各地で生産され始めている。
大手の酢メーカーも参入し、競争が過熱し始めている。
黒酢がアミノ酸を豊富に含んだ健康飲料だけに、これからもますます注目を集めていくにちがいない。
そういう中で勝敗の分かれ目は、津曲社長の「本物は分かる」という経営哲学こそ重要なキーワードである。



                                                           上妻英夫

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