【2】お申し出者の説明だけでは『事実』不足。
現品・現象・現場に立ち返る『3現主義』が最大の『事実』
お申し出者は目いっぱいあなたに製品の不満を伝え、あなたも興奮しているお申し出者にさまざまな
話し方を工夫して『事実』を細かく聞き取っていくわけですが、そのインパクトや、会話にかけた時間や、
労力にすっかり『正しい事実』が認識できたような気分になっていませんか?
そして、その場で不具合の予測される原因や、取り組みの可能性が高い改善策や、
お申し出者へのおわび対応策などを口走ってはいませんか?
それも、長々と。まだ、問題の製品の不具合を見ていないのに、つまり、正しい原因が見つかっていないのに。
さらに、やるべき改善や、対応も決まっていないのに。
お申し出者の腹立ちに押され、口頭でいただいた情報で、すべてが解明できる優れた担当者でありたいと思う気持ちや、
何か言わなければお申し出者の気持ちが鎮まらないという焦りなどから、問題の製品を見ないうちに軽々しく、
ついついいろんなことを予測や憶測や、想像で口走ってしまうことは、クレーム対応の手順を誤っているといえます。
クレーム対応担当者は、まずひとしきりお申し出者からの情報や、お気持ちをお伺いし、
ある程度の『事実』を認識した次の手順は『3現主義』に取り組むことになります。
『3現主義』というのは、『現品』を手に入れ、『現象』がお申し出のとおりかどうか、また、
その現象から予測される原因を見出し、それはある作業工程で生じたのであろうと仮説を立て、
可能性の高い『現場』を調べるという一連の作業のことを指します。
つまり、クレーム対応というものは必ず『現品』を手に入れないことには、
どのように対応させていただくべきかの解答は出ないものなのです。
ところが、ついついお申し出者からいただいたたくさんの口頭情報
ですっかり『事実』を把握した気分になってしまうんですね。
さらに、「なにが原因!?わからないの!?そんなことないでしょう!?」とか
「どうしてくれるの!?今、答えなさいよ!!」なんて辛らつな言葉を投げかけられると、
担当者としても、今の興奮を鎮めるために「それはですね~」と口走ってしまうのです。
そんなあなたにきょうからお願いしたいのは、お申し出者の苛立ちに圧倒されてその場逃れを目的にした、
予測される原因や、可能性の高い改善策や、おわび対応などを具体的に話さないということ。
相手の苛立ちがいくら高くても、「現品を拝見してから、改めてご説明をさせていただきますので、
少々、お時間をいただけませんでしょうか?」と、お願いし続ける根気を持っていただきたいと思います。
現品からさまざまなことを調査し、正しい原因や、改善、対応策をお話する方が、
その場逃れで差し出したお話しよりも、正確で、実行性が高いということを考えれば、
お申し出者の苛立ちまぎれのプレッシャーにも耐えられる心づくりもできます。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)