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- 第75回『名刀に挑む』(著:松田次泰)
4月は新年度の始まりで、
企業人にとっては、一番新鮮で気合の入る時期。
目標に向かって挑戦する意欲が高まる、と同時に
一流の刺激を受けられる、とっておきの一冊をご用意しました。
それは
『名刀に挑む』(著:松田次泰)
です。
著者の松田氏は、日本を代表する刀鍛冶。
平成29年現在、国宝1,100点のうち日本刀は110本。
実に国宝の1割を日本刀が占めていることをご存知でしょうか?
そして、そんな価値の高い日本刀の世界における最高峰が、鎌倉期の刀です。
ところが、極めて残念なことに、その製法は失われてしまいました。
特に江戸期以降、数え切れぬほどの刀鍛冶が鎌倉刀の再現に挑むも、
誰一人として果たせないまま。
しかし、もはや不可能と言われていた鎌倉刀を、長きに渡る挑戦の末、
見事再現してみせたのが、この松田氏なのです。
数百年の間、いかなる名人をもっても成し遂げられなかったこの偉業が、
一体なぜ成し遂げられたのか?
松田氏の取り組み方、考え方は、経営者やリーダーにとって、
今ぜひとも知っておきたい、学び取りたいところです。
何より、人間国宝級の名工の言葉に、直に触れることができることが、
大きな実りといえます。
当然ながら、名言も数え切れず。
たとえば、
・名工の条件は多作であること
・異端は認められた瞬間に先端になる
・自分の力量、才能で勝負しなければいけない仕事はある日突然変わる。
悩み抜いて、試行錯誤を繰り返して、それでもやり抜いていくうちに、
ある日突然「ポン」と変わる。
そういうことを、若い頃に1回でも、2回でも経験しておかないと、
歳をとってから辛抱できない。その瞬間が来ることがわからない人は、
途中であきらめていく。
・仕事が突然変わる瞬間を経験するためには、普段の地道な仕事しかない。
休んだらダメ。たえず頭を動かして、手を動かしていくしかない。
失敗ばかり続いても、それでも、やり続けるしかない。
・「世界で一番のよいものを作るのに、どうやって突き抜けるか」という発想が
できなければ、所詮、勝ち抜くことなどできない
・名刀であるためには、品格が必要
など、全て経営に置き換えて考えられることばかりです。
また、なぜ日本刀がこれほど多く、国宝に指定されているのかについて、
「刀が単なる武器ではなく、美術品であり、高い精神性を帯びたものだから」
と氏は語っています。
日本文化をさらに知る上でも、非常に貴重な一冊といえます。
高みに向かい続ける、上り続ける経営者、リーダーに
今ぜひ読んでほしい一冊です!
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第1番&第2番』
ネーメ・ヤルヴィ(指揮)エーテボリ交響楽団 (演奏)
です。
「ペール・ギュント」には多くの録音がありますが、
ヤルヴィ指揮エーテボリ響によるこの1枚が最高の名盤との高い評価を受けています。
合わせてお楽しみください。
では、また次回。