コロナ禍以前から述べてきましたが、経済活動の低迷が予測される今こそ、
デジタル化で固定費を下げてほしいのです。
つまり、最大の固定費である、労務費の削減です。
多くの経営者が、
「一刻も早く損益分岐点を下げなければ、今の売上高が続くと資金繰りがもたない」
「今のうちに損益分岐点を下げておかないと、 わが社もいつ、マサカの坂の直撃をくらうかわからない」
と感じておられるはずです。
なかでも、最も大きな痛手を負うのは、労務費です。特に、社歴の長い会社ほど、
労務費のなかに、ムダなコストが潜んでいます。デジタル化で処理でき、人がやらなくてもよいことを、
未だに変えずにそのまま取り組んでいるのです。
例えば先日、このようなことがありました。
異業種の経営者数名で話しをしていたときのことです。
そこで、デジタル化がまだまだ遅れている、という話題になりました。
創業80年超の会社の、ある経営者が言いました。
「うちは棚卸で製品を数えるのに竹串を使っています。」と。
一同に「どういうこと?」となりました。
説明を聞くと、こうです。細いパイプ状の製品が積み重なっており、
それを数えるのに、まずはパイプの穴に竹串を刺してゆきます。
で、すべての製品に刺し終えたら、その竹串を抜きます。そしてその竹串を数えます。
その数を、棚卸の数に計上しているのです。しかも、二人で竹串を数えて、数字が合わなければやり直す、というのです。
その製品は重量があり、手にとって数えることができません。そこで、このような方法が考案された、とのことなのです。
「そんなめんどうくさいことしているのか!」
「なんの付加価値も生まない作業に二人もかかるなんて、 もったいなすぎる!」
と、当然の声が他の経営者たちから出ました。
「いや、だからなんとかしたいんですよ。」
「現場はこの方法がベストだ、と思い込んでいるんです。」
と当人が言っている矢先に、システム設計を扱う会社のメンバーが言いました。
「それって、画像認識でやれば一瞬でできますよ。」
聞くと、こういうことです。
「そのパイプ状の製品が積み重なった断面を写真で撮って、その画像にある丸い穴の数を簡易AIで数えさせればいいんです。たぶんできますよ。」
となり、後日早速、その画像をシステム設計会社の経営者に送信しました。
「これなら十分、画像認識でできますよ。
定点観測で画像を抑えれば、毎日でも一瞬で数をつかめますよ。」
との返事がありました。
竹串方式は手間がかかるので、一年に一回しかしていなかったのです。
だから、日常におけるその製品の動きや適性在庫が、わかりづらかったのです。
その会社ではようやく、竹串方式をやめるべく、すぐに動き出したのです。
「そんなばかなこと、わが社はしていない。」
と、言い切れますか。探せば似たようなことは、社歴の長い中小企業なら、まだまだ潜んでいるはずです。
中小企業には今なお、非生産的な作業が巣食っているのです。
多くの従業員が、疑問も持たず、当たり前のように数十年前の方法を続けているのです。しかも、現場実務を知る経営者でないと、その事実がわからないのです。
経営者が知らないところで、遅れたアナログ業務があるかもしれないのです。
今一度、各部署の実務にデジタル化できることがないか、幹部陣で社内業務をじっくりと観察してほしいのです。
昨今、デフレどころか、低売上高が続く経営環境なのです。その環境に合わせて、損益分岐点売上高を下げておかなければ、多くの今の中小企業の収益体質では、儲けが残らないのです。だから、
「固定費を徹底的に下げよ!」と言いたいのです。
売上高が下がろうとも、営業利益を残せる抵抗力をつけるには、儲けに直結しない余分なコストを削るべきです。その最たるものが、労務費なのです。
社歴の浅い会社は、当然のようにデジタル技術を使います。カネがないから、知恵を絞るのです。その分、固定費が低いです。
長い社歴の中小企業では、かつての倹約意識が薄れ、新たな技術に目を向けることを忘れているのです。
10年以上、方法が変わっていない業務があれば、その業務は絶対に遅れた方法で行われているはずなのです。そこに利益の源泉が眠っているのです。