コロナショックで想定外の売上減少に見舞われており、経営危機に陥っている会社があります。20年前、30年前は、まさに我が世の春を謳歌した会社でも、気付けば船は傾きかけています。ゴーイングコンサーン、会社を存続させることは、難しいことだと、改めて感じるのです。
こうしたショックにおいて、危機に陥る会社というのは、
普段から、財務体質が悪い会社になります。
もともと平常時から借金が多い会社は、ひとたびショックが起これば、
借入金の返済がままならず、右往左往することになるのです。
そして、そういった財務体質が悪い会社が、
なぜそうなっているかといえば、経営陣が財務に弱いからなのです。
オーナー企業において、経営危機の真の原因は、
創業一族が財務を勉強してこなかったことにあるのです。
財務に弱い会社の特徴として、
(1)経営者が売上高にしか興味を示さない
トップは、とにかく売上を上げることを目標にしています。
会議の報告の中心は売上高であり、利益は二の次であり、
キャッシュフローのことなど考えたこともありません。
新規売上の話も、「売上がいくら増えるか?」が中心で、
粗利益や売掛金の回収条件の報告は一切行われません。
こういうトップに「会社はどうなったら潰れますか?」と質問しても、
「売上が減ったら」などとトンチンカンなことをおっしゃいます。
会社の血液は売上高でなく、キャッシュフローであることをご存知ないのです。
(2)借入残高に無頓着
債務償還年数=借入残高÷キャッシュフロー(営業利益+減価償却費)
これが、7年以内だと青信号(合格)、20年以上だと赤信号(不合格)、
15年なら黄色信号です。
また、借入金額が月商の何倍か?という月商倍率も目安になります。
青信号 - 借入金残高が月商の3か月分以内
黄信号 - 借入金残高が月商の6カ月分以内
赤信号 - 借入金残高が月商の12ヶ月分以上
黄色信号が灯っているのに、なんとも思わない経営者がおられます。
会議で貸借対照表の報告が一切ないため、
いったい、わが社の借入金がいくらあるのかご存知ないのです。
当然、自社が何信号かも分からないのです。
よしんば、借入残高を把握していても、
“借入はこのくらいはあって当然。昔に比べればまだマシだ”と思うようになるのです。
しかし、昔は営業利益が出ていたので、借入残高が多くてもすぐに返せたのです。
いまは、営業利益がわずかで、返す力がなくなっていることにお気づきになっていないのです。
(3)撤退判断の基準が感情中心
財務に弱い会社では、赤字部門、赤字店舗が長らく放置されたままです。
「早急にそこまでしなくても・・・みんな困るでしょう!」
「もう少し様子を見て、時間をかけよう!」
「せっかく店舗を出したのだから、もったいない!」
「撤退すれば、取引先とのこれまでの信頼関係が崩れます!」
判断の基準が、ゼニの勘定ではなく、気持ちの感情なのです。
「頑張れば黒字化できる」「コロナが終わったら」
と何の根拠もなく、希望的な観測に浸って、決断を先送りするのです。
逆に財務に強い会社の会議は、常に勘定、つまりキャッシュフローで考えています。
私の顧問先に株式会社大崎工機(仮称)があります。
コロナ禍の状況にありますが、豊富なキャッシュを元に、このたび、20億円を超える大型不動産を買収します。
この会社は、投資をする際は、常に経営幹部に投資計画表を作成させています。
その計画表は20年単位で作成されています。
売上高、営業利益、税引後利益はもちろんありますが、
減価償却費の金額や、資金調達額(自社か銀行か?)、借入条件も当然明記され、
最後はキャッシュフローが計算されています。
それも投資案件のキャッシュフローと、全社キャッシュフローと2種類のキャッシュフローで考えています。
「投資をして、何年で回収できるか?」という投資回収期間についても、
計算がしっかりと行われています。
大崎工機(仮称)の経営者のように、普段からキャッシュフローを中心に考えていれば、会社の財務体質はやがて強くなり、キャッシュも増えていきます。
自己資本比率は80%、無借金経営で、現預金は15億円(年商の半分ほど)ほど
持っています。
こういう会社は、こういう状況では、大きなチャンスとなります。
不動産が売りに出る、あるいは競合他社が手を引き、
バーゲン・セール状態になるからです。
買収交渉はこれまでに比べて格段に買い手有利の状況になり、
必ずよい物件、会社、案件が舞い込みます。
このとき、一つだけアドバイスするならば、「焦るな」ということです。
N社の場合もそうでしたが、例えば、不動産売買の間に入っている仲介業者は、
必ず買い手を焦らすようにリードしてきます。
「他に、5社が手を挙げています。」
「今週中に、買付証明を出さないと他社に決まります」
「最低でも〇億でないと手に入りません。」
これは、売買の対象が不動産でも、会社(M&A)でも同じです。
N社でもそうでしたが、このときに、「買いたい」という欲が強すぎると
、冷静な判断ができません。
「今回のコロナショックで他社は手を下げるはず。
金額は相場よりかなり高くなっているから、少し冷静になりなさい。
焦りが一番禁物だよ。」
私は、このように若社長に進言し、交渉にあたってもらいました。
最終的に当社予定金額から、4億円もディスカウントして契約の運びとなりました。
こうしたショックが来ると、普段から財務に強い会社はますます強くなれるのです。
まさに、優勝劣敗ですね。
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