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第187話 「2022年に進めてほしいこと」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

 まだまだ継続するコロナ禍ではありますが、この2022年にぜひとも進めてほしいことがあります。

 

 それは、コロナ融資による過剰な現預金を返済することです。

 

 一昨年の2020年、コロナ禍突入で先行きが見えない時に、多くの中小企業がコロナ融資を受けました。そのおかげで大いに助かった会社もあります。

 

 しかし、特に現預金に困っているわけでもないのに、

「当面は無利子だし、銀行がすすめるので借りました。」

という会社も多いのです。

 

 コロナ融資は、銀行にとってお金を貸す絶好の機会でした。お金の必要の有無に関わらず、銀行は中小企業に貸しまくったのです。しかも保証協会による100%保証つきです。銀行にとっては、リスクが全く無いのです。

 

 その結果、お金に困っていなかった会社は、コロナ融資で借りたものの、現預金と借入金を積み上げただけになりました。総資産が増えて、自己資本比率や総資産経常利益率(ROA)が悪化したのです。

 

 「必要のない資金なら、早く銀行へ返してください。」と社長に言うと、

「無利子の期間が終わりに近づいたら返しますから。」と、答えるのです。

実際、このようなお考えの社長が多いです。

 

 コロナ融資の無利子が終わり始めるのは、2023年の4月~6月ころです。

 

 ではその時期、中小企業がいっせいに、不要なコロナ融資を銀行に返そうとしたら、どうなるでしょうか?銀行にすれば、あちこちの会社から、大量の融資返済が申し込まれるのです。銀行は絶対に反対します。特に、市中銀行は激しく反対することが予測されます。

 

 それでなくても、銀行はカネ余りで貸し先がなく、困っているのです。そのような状況のなかで、大量の現金が一気に返されるのを、

「はいわかりました。どうぞ返してください。」

と素直に受け入れる銀行は、ほとんどないと思われます。

 

 「いやいや、そのようなことを言わずに、金利は低くさせていただきますので、そのまま御社でお持ちください。まだまだ、お持ちいただいたほうが安心できますよ。」

などと、銀行担当は返済させないよう、言葉巧みに言い寄るに決まっています。

 

 「支店長と約束しているから大丈夫ですよ。そのときには返せますよ。」

と言った社長がおられました。

 

 そのような銀行との口約束は、何の効果もありません。返済しようとしたときには、もうすでに異動で、別の支店長かもしれません。そうなると、

「それは前任者のことですので、申し訳ありません…。」

と言われて終わりです。

 

 さらに、今や銀行は店舗縮小や合併がどんどん進んでいます。

 

 借りていた銀行の支店が閉鎖になって担当店舗が変わる、借りていた銀行が合併になって名前が変わる等ということも、大いにあり得るのです。そうなるとなおのこと、銀行にとっては、コロナ融資の返済を拒むのに好都合なのです。

 

 で、何度も銀行から反対されるうちに、

「じゃあ、返さずにこのまま持っておこうか。銀行とのつきあいだと思えばいいか。」

という結果になりがちなのです。そうなると、金利は発生するし、総資産が増えて財務指標が悪化し、格付け(スコアリング)を落とす原因にもなるのです。

 

 しかも、コロナ融資の無利子期間が終わる頃の2023年4月には、日本銀行の黒田総裁が任期を迎え、新たな総裁に変わります。新総裁が次の金融施策を打ち出そうとする時期です。銀行にとっては、気になる大親分が入れ替わる一大事なのです。そんなときに、大量のコロナ融資返済を安易に受け入れる銀行など、あるはずがないのです。

 

 今はカネ余りです。財務体質が強く、銀行格付け(スコアリング)が上位であれば、融資はいつでも受けれる時代です。それに、銀行と当座貸越契約を結んでおけば、その枠内でいつでもすぐに資金調達できるのです。

 

 不要な借入金で現預金を過剰に持つことは、会社にとって、何もいいことがないのです。そうならないためにも、各社が駆け込む2023年の春先ではなく、2022年のうちに、コロナ融資を返済してほしいのです。

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