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第18回(客のためという視点で当たり前を貫く)「濱田家」

「社長の繁盛トレンド通信」

◆濱田家◆


「客のため」という視点で当たり前を貫く

 


 
寿司屋だった店舗を改装して作ったベーカリー『濱田屋』。商店街から離れ、決して恵まれた立地ではないが、開店から閉店まで客足が絶えることはない。  

対面販売で、客とスタッフの間にちょっとした会話が生まれる。すしカウンターやネタケースをパン置き場にしたアイデアもユニークだ

パンは常時60種用意。季節ごとに旬の食材を使った新しいパンが入れ替わりで20種ほど加わる。リピーターに飽きさせない工夫を施しているわけだ。写真は「れんこんパイ」(180円)
 

 

藍染め暖簾に和風の引き戸、木のカウンターに作務衣姿のスタッフ――。
東京三軒茶屋にある『濱田家』は、一見すると居酒屋か寿司屋のようだ。
ところが、店に並ぶのは焼きたてのパン。
以前寿司屋だった店舗を、ほとんどそのまま活かして作った珍しい"ベーカリー"だ。



パンはすべて店内奥の工房で焼き、作りたてを提供している。
小麦本来のうま味を引き出した食パン、ひじきやきんぴらゴボウなどを入れた
ユニークな和総菜パンが人気商品だ。
来店客はひっきりなしで、頻繁に行列もできるほどだ。遠方から来る客も多い。
工房を併せた店舗の広さは約11坪、販売スペースは、わずか 4坪でしかない。
それでも1日1800個近くのパンが売れ、日商は平均20万円にものぼる。



もっとも、人気の秘密は「パンの味」と「内外装のおもしろさ」だけではない。
同店の強みは、むしろコミュニケーションを主眼においた接客術にある。



現在はほとんどのベーカリーが、トレイとトングを客に持たせるセルフサービス販売を採用している。
しかし『濱田家』は、パンが並んだカウンターを挟み、店員と客が向かい合う昔ながらの対面販売スタイルだ。
そのため、にこやかに会話を交わすスタッフと常連客の姿が見受けられる。
効率を考えれば、マイナスでしかない。
しかし、こんな些細な会話から、人は「楽しさ」を感じるものだ。
奥で作業していたパン職人が、そのままレジに立つのも、新鮮さのアピールに繋がる。
味の違いやオススメ商品を、直接作り手から聞けるという意味でも便利だ。
店側から見れば、職人が客の意見をダイレクトに聞けるため、マーチャンダイジングも可能だ。



「元寿司屋の店舗を利用したのも、奇抜さやユニークさを狙ったというより、
こうした対面販売スタイルに最適と考えたからです」と同店オーナーの濱田豊氏は言う。

「加えてセルフ方式のベーカリーは、商品管理面で疑問がある。
トングでボロボロになったパンがそのまま置かれていたり、下の棚のパンは雨傘のしぶきがかったり、
ということが有り得ますからね。店の都合、いわばコスト面だけで採用しているとしか思えない。
本当にお客様のことを考えたら、対面販売がベストでは」(濱田氏)



そもそも濱田氏は、長年、京都の老舗ベーカリーに勤めていた。
その店は全国に広まる大ヒット商品を生み出すと同時に拡大路線に入り、
一人ひとりの顧客より 卸し先を増やすことを主眼におくようになった。
そんな経営スタイルに違和感を覚え、独立に至ったという。



「自動販売機のようにパンを売る。ただ卸し先が増えればいいという経営では、
エンドユーザーの方々は離れるだけだと思ったのです」(濱田氏)



人気の店舗や商品は、すぐにメディアに取り上げられ評判を呼ぶ。
その後、出店や卸し先を増やし、拡大路線を歩むのが定石だが、規模が大きくなれば、
商品も接客も少なからず質が下がるものだ。また急激に他店舗展開すれば、飽きられるのも早い。



『濱田家』は、そんな王道を頑なに拒否し、あえて小さな対面販売店で勝負を続けている。
デパートやスーパーなどから出店や卸しの要請も絶えないが、断っているという。
「地に足のついた当たり前のベーカリーがやりたいだけだから」と濱田氏は続けた。



「店のため」ではなく、「客のため」という視点を取り戻す。
同店のような姿勢こそが、今のような競争の激しい時代を生き残るカギなのかもしれない。
考えてみれば、それこそ"当たり前"のことだが。
(カデナクリエイト/箱田 高樹)

◆ 社長の繁盛トレンドデータ◆

『濱田家』

小麦と酵母 濱田家

住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-17-11-102

最寄り駅:東急田園都市線三軒茶屋駅より徒歩7分

TEL&FAX:03-5779-3884

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