◆成子坂 田一◆ きめ細かいサービスを実現する |
客に合わせて季節によって変わる料理
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昨年7月、新宿・副都心の住友新宿オークタワーにオープンした日本料理店『成子坂 田一』が人気だ。 接待や会社仲間との飲み会に使うのはもちろん、一人でやってくる経営者やキャリアウーマンも少なくない。 同店の夜のメニューは、『おまかせ料理』(9450円~)一種類のみ。 ところが、客に出される料理は、一人一人微妙に違う。 肉料理を例にとれば、高齢者なら量を減らしたり、ロースではなくヒレ肉を出したり、 柔らかくなるよう切り目を入れたり、野菜料理に切り替えたりといった具合だ。 2~3品だけ食べて帰る常 連客もいる。 同店には、板前が5人いる。 客の腹具合に合わせたサービスができるのは、料理の出し下げを全て板前がしている上に、 客数を極端に抑えているからだ。約40坪の店内に、わずか27席しかない。 通常なら60席から70席は作れるスペースだ。 また、天井が高いので、欲張れば中2階にも席を設けられる。 ところが店主の和田康嗣さんは、ゆとりある接客をするために、席数を極端に少なくした。 しかも、全て個室だ。カウンター席も一つの大きな個室に収まっている。 この店をオープンするまでは、和田さんは、新宿の歌舞伎町で客数約50席の店を経営していた。 それは、煮物だけで10種類以上揃っているメニュー豊富な接待用の高級店だった。 ところが、板前は料理に忙しく、顧客一人一人の気持ちにまで配慮する余裕はとてもなかった。 料理の出し下げは仲居がしていたため、客が料理を残した理由も、腹一杯なのか、 口に合わないのか、大事な話をしていて食べる暇がなかったのかまったく分からなかった。 このような板前と仲居の分業 体制に疑問を持ち、板前が接客する店をつくったわけだ。 飲食店も製造業と同様、これまで、分業を進めながら事業を拡大していくことが、 一つの進歩だと考えられていた。 その結果、工場の大量生産品と同様、メニューもサービスも硬直的になり融通が利かなくなっていった。 製造業は、大量生産品からの客離れが起こり、現在、多品種少量生産に挑んでいる。 飲食店も、 そろそろ、大規模店で、いかに個人の店のような、あるいは超高級店のような きめ細かいサービスを実現するか考える時期にさしかかっているのかもしれない。 『成子坂 田一』の人気を見ると、そう確信できる。 (カデナクリエイト/竹内三保子) ◆社長の繁盛トレンドデータ◆ 『成子坂 田一』 東京都新宿区西新宿6-8-1住友不動産新宿オークタワーLB階 TEL:03-5333-3966 最寄り駅 丸の内線 西新宿駅より徒歩3分 |