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第63回(「超・地域密着で顧客の心を掴む ダイシン百貨店」)
◆ダイシン百貨店◆
「超・地域密着で顧客の心を掴む」
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東京・大森のダイシン百貨店。現在、営業を続けながら同じ場所に店舗を新築している
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高齢者のために、巻きずしは1カットから販売する
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刺身や果物、惣菜なども少量から販売。普通の量では多すぎるという高齢者から好評だ
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年配者によく知られているが、普通の小売店では販売されていない商品もダイシン百貨店では取り扱う
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日本百貨店協会のデータによると、2010年6月までの全国の百貨店売上高は28か月連続で前年同月比マイナス。地方の百貨店は次々と閉店し、大手百貨店が経営統合を進めるなど、百貨店業界は厳しい状況だ。そんな中、業界全体の苦戦を尻目に、業績を伸ばしているのが東京・大森のダイシン百貨店だ。
大森で創業し、62年を迎える同店の好調の秘密は、徹底した地域密着型サービスにある。「500メートル圏内、シェア100%」を掲げ、他店舗と差別化。特に近隣地域は高齢者が多いことから、高齢者向けのサービスを充実させているのが特徴だ。
例えば食料品売り場では一人暮らしの高齢者でも食べきれる少量パックの惣菜を販売。刺身は3、4切れ程度で、巻き寿司は一切れで包装され、店頭に並ぶ。
品揃えにも注目したい。同店は、一般的な小売店ではまず見ることのできない粉歯磨の「スモカ歯磨」や「バイタリス」といった男性用化粧品など、年配者にはよく知られた昔懐かしい商品を数多く取り揃えている。生活体験の長い高齢者は商品に対するこだわりや愛着が強く、決まった商品を使い続ける人が多い。同店はお客からの「あの商品ない?」という要望に答え続け、年に1個しか売れない商品でも売場に並べる。売り場のスタッフがバイヤーも兼ねるという昔からの同社のスタイルがこうしたサービスを実現。在庫管理や品出しの手間は増えるが、「あそこに行けば必ずある」という信頼感が常連客の心をつかんで離さないというわけだ。
最近では「地域密着」「高齢者向け」をいままで以上に意識してサービスを増やしている。
例えば、来店した70歳以上のお客に対して、店で買ったものを無料で配達する『しあわせ配達便』。近隣地域と店舗の間で運行する無料シャトルバス『ダイシンバス』。在宅の高齢者向けに500円で弁当の出前サービスを行う『ダイシン出前弁当』など。どのサービスも利用者からの評判は良いという。
こうしたサービスは、外注を使わずに自社のスタッフで提供。スピーディで小回りのきくサービスの展開を実現した。もちろん最初からすべてがうまくいくわけではない。お客に怒られたら「申し訳ございません。なるべく改良するので許してください」と、顧客とのコミュニケーションの中で改善を積み重ねていく姿勢は変わらない。
今までにやったことのないサービスを始めるにあたって、不慣れな自社スタッフを使うのは、一見効率が悪いようにも思える。だが、自社スタッフが顧客の声を直接聞くからこそ、スピーディな改善と顧客満足度のアップが実現できるのだ。ダイシン百貨店の成功は、「顧客とのコミュニケーション」の重要性を再認識させてくれる好例と言えそうだ。(カデナクリエイト/須貝俊)
◆社長の繁盛トレンドデータ◆
ダイシン百貨店
東京都大田区山王3丁目6-3 ダイシン百貨店本館
TEL:03-3773-1721
●ダイシン百貨店 社長 西山 敷氏の講演CD
「《超・地元密着》繁盛店経営7つの仕掛け」CD」
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大手の猛攻・ネット消費の隆盛の中、「半径500メートル商圏のシェア100%獲得」を旗印に、徹底した熱烈ファンづくり戦略を展開。大競争時代の「商いの原点」と、企業再生ヒントを説く |
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