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第5回 臍下の一点(2)

社長の「氣」

 日本経営合理化協会主催の5回連続の「氣の道場」で指導したときのこと。私の指導は体験形式のため、参加者は動きやすい服装に着替えます。初回、ある経営者が開始時間の直前に慌てて会場に来られました。
 「ハンガーが足りないじゃないか!一体、どうなっているんだ!」
 着替えのために準備された部屋から怒り声が聞こえます。会場となったホテルの対応にどうやら不備があったようです。セミナーは開始前から不穏な雰囲氣に満ちていました。
 ご当人、怒りが収まらないまま参加されましたが、様々な体験をするうちに次第に落ち着いて来ました。セミナーが終わると私のところへ来られました。
 経営者:「先生、今日のことを謝らせて下さい」
 私:「どうかされましたか」
 経営者:「ここに来る前に会社でトラブルがあり、それをひきずったまま来てしまいました。先生がどんな相手にも穏やかに対応しているのを見て恥ずかしくなってしまいました。どうしたら、そんなに穏やかにいられるのですか」
 私:「私も人間ですので、イライラすることや怒ることもあります。しかし、そのままの状態では大事な場面で力を発揮出来ません。これから一緒に心を静める訓練をされませんか」
 経営者:「ぜひ宜しくお願いします」
 意識が上がり頭に氣が滞った状態だと、刺激は何倍にも増幅されて身体に伝わります。臍下の一点に心が静まった状態であれば、同じ刺激にも冷静に対処することが出来ます。この方の場合、「ハンガーが足りないですよ」と会場係に声をかければ済むことが、怒り心頭に発するわけです。
 人に何かを伝えるとき、特に「注意をする」ときは氣をつける必要があります。「言わなければ良かった」と後悔した経験をお持ちの方も多いと思います。その瞬間にカッとして出してしまった言葉でも、一旦発した言葉を取り消すことは出来ません。私も未熟な頃は何度も同じ失敗をしていました。臍下の一点に心が静まった状態で話をすれば、使うべきでない言葉を発することはありません。
 人の話を聞くときも同じです。多くの人は、自分のなかに結論を持って相手の話を聞いています。相手を説得する前提で話を聞いてしまうと、相手のことを理解することが出来ません。それでは話を聞いたことにはなりません。臍下の一点に心が静まった状態で話を聞けば、(相手の言うことの是非は別として)相手が何を言いたいのかを理解することが出来ます。
 「話をする」こと、「話を聞く」ことは、コミュニケーションの基本です。刺激に対して反射的に反応する人、過剰に反応する人は、相手と良い関係を築くことが出来ません。話をするとき、話を聞くときが「臍下の一点に心を静める」ことを会得する最高の機会です。
 会社で実践することも重要ですが、最も良い実践の場は家庭です。会社においては力関係があるので、力を持つ人が無理を言っても相手は飲み込んでしまいます。一方、家庭はそうはいきません。夫婦間においても、お子さん、もしくは親御さんとの間においても無理は通りません。家庭で実践できたら本物です。
 さて、5回のセミナーを終えた後、先述の経営者は周囲が驚くほど穏やかになりました。どうやら、この方は元々人柄が良く、優秀な経営者だったようです。ただ、刺激に対してすぐに反応する悪い癖があったのです。臍下の一点に心が静まった状態で人に接することを訓練し、日常生活で刺激に対して「ひと呼吸」おくことを実践してから変わりました。家族とも言い争いになることが多かったのが、今では普通に話を出来るようになったそうです。
 また、別の経営者の例では、「○○株式会社 社員一同」で社員の皆さんから当会に御礼の品物が届いたことがあります。これには本当に驚きました。聞けば、この社長さんは会社で常にイライラしていて、よく社員にぶつけていたそうです。セミナーに参加してからは、それが見事になくなったそうで、その御礼だったのです。社員にとっては死活問題だったのでしょう。翌年の同じセミナーにはご家族や幹部社員が参加していました。
 心は静めようとすればするほど、余計に静まらなくなります。心は無理に抑えようとすれば我慢となり、いずれ耐えきれなくなって爆発します。
 重要なことは、精神論ではなく、無理に何かをすることではなく、心と身体の関係を正しく理解し、具体的な方法を学び訓練することなのです。
 
 
●日本経営合理化協会主催の氣のセミナーの様子
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