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第4回 臍下の一点(せいかのいってん)

社長の「氣」

 2010年1月、野球の広岡達朗さんのご尽力により、米国・メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースで氣の指導が始まりました。
 最初の「氣の講習」は、特別キャンプの一部として、ロサンゼルスにあるドジャー・スタジアムにて10日間に渡って行われました。指導対象はマイナーリーグのTop Prospects(最有望選手)24名でした。
 日本の野球で云ういわゆる“2軍”のイメージとは異なり、マイナーリーグは若い選手の教育機関であり、どれだけ優秀な新人でも、マイナーリーグで基礎教育を受けます。その中から晴れてメジャーリーガーになるのは僅か6%。チャンスさえあれば、いつでもメジャーリーガーになれる能力を持った若い選手達でした。
 初日を迎え、どうやら上層部から言われて渋々参加していた選手が多かった様子で、その表情には、なぜ合氣道の先生から「氣」などを学ぶ必要があるのかと、不安と不満に満ちていました。
 初回、指導する私に与えられた時間は20分間、翌日以降も氣の講習が行われるかどうかは、この20分間にかかっていました。限られた時間で「氣とは何か」「氣を学ぶことで何を得られるのか」を簡潔に示し、最も体格に恵まれた選手を相手に姿勢のデモンストレーションを行い、選手達が実際に体験をしたところ驚きの声が上がりました。
 始めは懐疑的であった選手達も、ひとたび「学ぶ価値がある」と分かると、すぐに真摯な態度で学び始めました。それを見ていたコーチ陣も関心を持ち、選手よりも前に出て学ぶことが多くなりました。初日、20分間だった指導時間は、最終日には1時間となりました。
 次のアリゾナでのキャンプからは、”Aikido Training”として公式に練習に取り入れられました。指導対象は80名以上に広がり、全体講習に加えてOne on One(マン・ツー・マン)の指導、フィールドでの指導もするようになりました。さらに、メジャーリーガーに指導する機会も出来ました。現在、広島東洋カープで活躍する黒田博樹選手は当時ドジャースにいて、評判を聞いて氣の講習を受けに来られました。
 キャンプで選手達と深く関わるうちに本当の課題が見えて来ました。
 マイナーリーグの選手達も、ドジャースに来るまでは各地でナンバー1であったわけで、野球の技能はみな卓逸しています。ピッチャーで言えば、100マイル(160キロ)の球を投げる選手が何人もいます。しかし、それは当たり前のことであり、選手として成功するかどうかは「大事な場面で実力を発揮出来るか」で決まります。
 練習のときは調子が良いのに、本番になると悪くなる。プレッシャーのない場面では力を発揮出来ても、ここ一番の場面では出来なくなる。あるいは、長いシーズンの前半は調子が良いのに、後半になると悪くなって来る。
 これらの問題は、野球の練習だけ、あるいはフィジカルトレーニング・メンタルトレーニングのいずれかだけでは解決しません。心と身体を一つに扱う「氣の講習」に求められるものが次第に明らかになって来ました。
 その土台となったのが「臍下(せいか)の一点」です。英語では”One Point”と言います。
 ベストパフォーマンスを発揮するとき、我々の意識は下腹に定まっています。それに対して、意識が頭や上体の方に上がることがあります。例えば、日本語では「怒る」ことを「頭に来る」といいます。あるいは「緊張する」ことを「上がる」といいます。どちらも意識が「本来あるべき場所」にはない状態です。
 スピーチのとき、頭が真っ白になってしまい、言葉が出なかった経験をお持ちの方がいるかもしれません。正に意識が上がった状態です。
 せっかく身体の隅々まで「氣」が通い安定した姿勢になっても、「怒り」や「緊張」、「不安」や「動揺」、あるいは「力み」で意識が上がってしまうと、姿勢は乱れてしまいます。姿勢が乱れたらベストパフォーマンスは発揮出来ません。姿勢は「身体の問題」であると同時に、「心の問題」であるということです。
 下腹であれば、どこでも良いかと言えばそうではありません。同じ下腹でも、力を入れても入らない場所でなければいけません。立った状態で下腹に力を入れてみて、力が入らない場所が「臍下(せいか)の一点」です。実際に確認してみると、思ったよりも下であることが分かると思います。
 ドジャースでの”Aikido Training”は、オーナーが変わって新体制になるまでの3年間、キャンプやシーズン中に継続して行われました。最も長い期間では、キャンプで6週間に渡って行われました。そこで学んだ選手の中から多くのメジャーリーガーが誕生し、現在ではオールスターゲームに出場している選手もいます。彼らは「One Pointのお陰でメジャーリーガーになれた」と言ってくれます。この上ない喜びです。
 「大事な場面で力を発揮出来るか」は、野球選手だけのテーマではありません。社長やリーダーにもそれが求められているのです。
 
●Top Prospects全員のサインが入ったボール(左)
●ドジャー・スタジアム50周年の特別記念品(右)
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