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第107話 目標クリアのための道のり!

北村森の「今月のヒット商品」

多くの企業経営層には、それぞれの悩みがあると想像いたします。売り上げや利益の減少、人材の確保、取引先の開拓…。

今回のテーマは、長きにわたって主軸として大事につくってきた商品が将来的にも消費者の支持を集められるのか、という、それこそ企業にとって切実な難問を解くことに挑んだ社長の話です。

地域に古くから根づく産品には固定ファンが存在する一方で、時代とともにそうした固定ファンの高齢化という課題に直面しかねませんし、なにより消費者の嗜好の変化によって需要に翳りが出てくるという問題にあります。

だからといって、伝統に裏づけされた産品をいたずらに変化させると、ただ単に時代に重ねた商品となりかねず、固定ファンまでが振り向かなくなる恐れもある。地域発のそうした産品にとって、拙速な「厚化粧」は、必然性のない改悪ともなってしまうかもしれません。

では、どうすればいいのか。今回の事例からは、そのヒントを得られるかもしれません。

 


ものは何かというと、佃煮です。魚介などの食材を甘辛く味つけして、保存にもいい、あの佃煮…。

千葉県香取市に店を構える麻兆(あさちょう)は、大正時代から佃煮の製造販売に携わってきた一軒です。水郷・佐原に位置し、地元客にも観光客にも愛されてきたといいます。

ただ、社長には深い悩みがあったと聞きます。「次の世代に受け入れられる商品の開発が、長年の課題だった」。佃煮という産品が、徐々に消費者から振り向かれなくなるのではないか、という不安がそこにあった。

決定的だったのは、高校生たちがイナゴの佃煮を買いにきた場面だったといいます、若い世代が購入してくれたと喜んでいたら、実がイナゴの佃煮を罰ゲームのように扱おうとしていた。社長にとって、これは大きなショックだったそうです。

ここで何もしないわけにはいかないと、社長は決意します。まず手始めに、地元産のピーナッツを佃煮にしようと判断した。「この地域には『みそピーナッツ』という惣菜が定着しています。みそがいけるのなら、醤油味の佃煮でもいけるはずだ」と社長は考えたのですね。つまり決して奇をてらっただけの必然性なき厚化粧ではなかった。次につくったのはカシューナッツの佃煮。ピーナッツの佃煮がまずまずの反応だったので、ナッツで派生商品を開発したわけです。

そして昨年(2025年)、今度はマカダミアナッツの佃煮をつくります。柔らかな食感となるため、さらに訴求力を備えられるはずだという判断でした。それが上の画像の商品です。60gほど入っていて値段は600円です。

 
写真引用元:https://asachou.com/

 

「佃煮マカダミアナッツ」と名づけたこの商品、いい仕上がりだと私は思います。購入する前は、どうしてまたマカダミアナッツまでも佃煮にするのか、そこに本当に意味はあるのかとも少し思ったのですが、口にすると、これが思いのほか面白いといいますか、納得できるものだったのでした。

想像していたよりも穏やかな味つけであり、カダニアナッツを優しい甘みが包んでいる感じです。食事の箸休めにちょっと口に運ぶのもいいし、蒸留酒のつまみとしても存在感を放つ。もちろん、おやつとしても成立しています。社長に聞いたら、タレの濃さをあえて控えめにしたとのこと。用いているのは、麻兆が長らくつくってきた佃煮と同じく、白ざらめ、醤油、みりんだけだともいいます。この店が商品化する必然性もそこにあったということでしょう。

麻兆の社長は、この「佃煮マカダミアナッツ」を完成させ得て発売するところ手を止めたわけではありませんでした。

全国スーパーマーケット協会が主催する「お弁当・お惣菜大賞2026」に、麻兆はこの「佃煮マカダミアナッツ」をエントリーします。すると、今年2月の表彰式で、惣菜部門の最優秀賞を獲得したのでした。エントリー総数はおよそ1万5000件といいますから、見事な結果です。

最優秀賞の獲得という成果は、メディアやネットで広く拡散し、その効果は目に見えて表れたそうです。まず、麻兆のネット通販の注文数は約40倍までになった。そして、以前は60代以上の消費者が多数を占めていた状況だったのが、「40〜50代、それも女性層の比率が高まった」といいます。つまり、お客さんの世代を下げ、次につなげるという目的を果たすことができました。また、「佃煮マカダミアナッツ」の味を知った消費者が、アサリなど定番の佃煮をついで買いしてくれる現象も生まれているらしい。

ここまでの成果を得られたのにはいくつかの理由があると整理できそうです。まず、商品開発の手を緩めなかったこと。次に、意表を突く商品化であったとはいえ、時代におもねるようなものではなく、言ってみれば時代をつくるという姿勢を貫いたこと(最初に用いたのは地元産のピーナッツであり、そこには親和性があったと解釈できます)。そして最後は、伝える努力を惜しまなかったことでしょう。

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