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第7話 「差がない」と「ほとんど差がない」は全くの別物

北村森の「今月のヒット商品」

昨年12月の発売以来、品薄状態が続いているヒット商品があります。
ソースネクストの「POCKETALK(ポケトーク)」が、それ。
 


スマートフォンより一回り小さく(ただし厚みはスマホの倍くらい)、ポケットにすっぽり収まるサイズです。これ、なんなのか。

通訳デバイスなんです。日本語で話す(長文にも対応)→それを文字に起こしてくれる→それを相手の言語に文字を起こしてくれる→相手の言葉で話してくれる、というもの。さらには、その逆(相手が現地語で話す→日本語で話してくれる)も可能です。現時点で音声出入力に対応するのは、実に45もの言語といいます。

要するに、ドラえもんの「ほんやくコンニャク」そのまんま。こちらが話す日本語を、相手の言葉に変えて音声出力してくれたり、相手が声にした言葉を、日本語にして音声で読み上げてくれたりする。

希望小売価格は2万4800円(税別)、グローバルSIM(2年間)付きは2万9800円(同)です。スマホのテザリング機能を使えば、SIMなしでも海外で使えますね。ここで気をつけるべきは、この「ポケトーク」、無線網を使ってネットに繋げない環境では機能しません。クラウド上にある翻訳エンジンにアクセスして働く仕組みを取っているからです。

さて、この商品、どこで試してみるか。こちらの状況お構いなしかのように早口でしゃべる人が多い都市で使ってみたい。
 


というわけで、「ポケトーク」を試用するためだけに、中国・上海に行ってきました。
 


ホテルのフロントで試したり…。
 


レストランで試したり…。

いろいろと使うなかで、この「ポケトーク」の強みを最も感じられたのは、地下鉄駅での場面でした。

上海は、地下鉄で移動するとラクな都市です。日本で言うところのSuicaのようなカードを先に入手し、適宜チャージしながら使うのが賢明。で、地下鉄駅でこう尋ねてみました。「このカードにチャージできる場所はどこですか」。

中国語への自動通訳が難しいと予想できたのが、この一文でした。「カード」や「チャージ」って、もともと英語じゃないですか。日本語で話して、ちゃんと中国語になるのか。
 


駅の窓口で、「ポケトーク」に向けて日本語でしゃべりかけます。「このカードにチャージできる場所はどこですか」。

さて、ここで話をちょっとだけ横道にそらしますね、皆さんのなかには、どうしてこの「ポケトーク」をわざわざ買わないといけないか、不思議に感じる人もいるかもしれません。スマホ用の翻訳アプリなら無料で手に入るじゃないか、と…。たとえば「Google翻訳」は無料であり、しかも多言語の音声出入力に対応しています。だったらそれでいいじゃないかと思いますよね。

今回、試したかったのは、2万円台後半の「ポケトーク」と、無料の「Google翻訳」との違いがあるのかどうか、でもありました。

話を戻します。地下鉄駅の場面で、両者の違いが顕著に出ました。
複数の駅で試したのですが、カードにチャージできる場所にどの駅でもたどり着けたのは「ポケトーク」でした。「Google翻訳」では、意味が通じなかった。
 


「ポケトーク」では、駅に張り付いているガイドスタッフが、チャージ窓口まで連れて行ってくれました。

両者の違いについて、後日、中国語ネイティブの知人に確認してみました。それぞれが、どのような中国語に訳していたのか。

実は、厳密に言えば、「ポケトーク」でも「Google翻訳」でも、正確な中国語訳ではなかったそう。

「ポケトーク」では「このカードはどこからお金を回収しますか」という意味に、「Google翻訳」では「私はどこからカードをもらえますか」の意味になっていた、とのこと。ただし、主語が「カード」であるポケトークではニュアンスがどうにか相手に伝わり、主語が「私」のグーグル翻訳では意味がほとんど通じないという結果になったようです。
 


こちらが「ポケトーク」での中国語訳。
 


こちらが「Google翻訳」での中国語訳。

この結果の違いはなぜ生じたか。気になりますよね。

「ポケトーク」は、45の言語ごとに、どの翻訳エンジンを使うか、細かく分けて設定しているそう。ひとつの言語単位で“より強い翻訳エンジン”をソースネクストが選び、それぞれに接続するようにしているところが、専用機である「ポケトーク」の強みである、と推察できる結果となりました。詳細は非公開ですが、おそらく中国語訳はバイドゥで間違いないでしょう。

「ポケトーク」の泣きどころは、ネットアクセスできない環境下ではお手上げであること。大都市である上海でも、レストランなどの屋内に入ると、無線網の電波が回り込まず、ネットアクセスできない(=通訳ができない)状況に陥る場面もありました。

その点には難儀しましたが、ネット環境さえ整えば、通訳機能はかなりのものでした。少なくとも、こちらの意思はほぼ伝わりました。タイムラグは予想していたほどにはなく(数秒は待つ必要がありますが)、実使用にまず堪えられる一台と言っていいでしょう。

ここで思うわけです。「差がない」と「ほとんど差がない」というのは別物だなあ、と…。「ほとんど差がない」とはすなわち、「(たとえ微細な違いであっても)そこに差はある」ことに他なりません。そして、その「微細な差」こそが、実使用での満足度を大きく変えるのではないか。言い換えれば、商品の評価や売り上げに、最終的には大きな違いを生むのではないか。

今回の「ポケトーク」と無料アプリの機能差とは、まさにそれかなあ、と思った次第です。

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