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第54話 人は過去の名声にとらわれない

北村森の「今月のヒット商品」

新年あけましておめでとうございます。2022年もよろしくお願いいたします。

 

前回(2021年12月配信のコラム)で、私は次のようなことを綴りました。「新語・新概念が真の意味で社会に浸透したか否かは、『その新語がいつしか使われなくなった』かどうかで推し量ることができる」。

 

たとえば「インターネット社会」であるとか「マルチメディア社会」であるとか、いまではもう口にする人はそういませんね。その意味では、SDGsやDXは、その概念が社会に定着するには、もう少し時間がかかるかもしれません。まだ、これらの言葉は陳腐化するところまでいっていませんから。

 

デジタル系の新語以外でも、時を経るうちにあまり聞かれなくなったものがあります。その一例を挙げますと「ジェネリック家電」でしょう。最新鋭では決してないものの枯れた技術をうまく使った、単機能に近い一点突破型の低価格家電を指す言葉です。2013年に登場した新語で、当時かなり注目を浴びました。ジェネリック家電は基本的に中堅・中小メーカーの手によって生み出されるものです。大手家電メーカーの向こうを張り、自分たちのできる手段を用いて消費者の心に刺さる商品を世に出そうと奮闘を続けていました。

こうしたジェネリック家電ですが、いつしかその言葉を以前より耳にしなくなっていますね。ジェネリック家電という領域が注目されなくなったからなのか。いやむしろ逆でしょう。ジェネリック家電は今や当たり前の存在となり、わざわざそう表現するまでもないほどになったことの証だと思います。

 

アイリスオーヤマは、ジェネリック家電メーカーの雄とも称される企業ですけれど、同社が販売するふとん乾燥機は5年連続で国内シェアトップを走っています。つまり大手メーカーの商品を超える支持を集めているという話。昨年秋には累計出荷500万台を突破したともいいます。

 

ふとん乾燥機など、別にシンプルなもので構わないから売れているだけ? いや、そうではないでしょう。日常使いする商品ほど、微細な使い勝手が気になるものです。同社のふとん乾燥機は、構造がシンプル(大きなマットをふとんに挟まずとも、ホースを突っ込めばいい)であり、しかもその割に性能が高い(マットを使わないのに、ふとんのほぼ全体にムラなく温風が行き渡る)。つまり、多くの消費者は、同社のふとん乾燥機の強みをきちんと理解したからこそロングヒットに結びついたと見るべきです。安いから買う、ではなくて、いいから買う、に変化を遂げているのが、昨今のジェネリック家電に共通する傾向ではないかとも感じます。

さあ、ここから何を読み取れるか。

 

かつて、大半の消費者は、「そのメーカーのイメージ」を商品選択の大きな要素においていました。このメーカーの家電だったら大丈夫、というふうにです。だから概して大手どころのメーカーの商品が売れていた。

 

ところが、現在ではそうでもないのですね。過去のブランドイメージに引っ張られず、純粋に「いま目の前にあるその商品がいいかどうか」で購入を決める傾向がある。

 

昨年のトレンドとして話題となっていた「Z世代」(10代半ば〜20代半ばの若年層)の消費性向などまさにそうです。インターネットネイティブどころか、ソーシャルネットワークネイティブであるZ世代は、情報の取り方も、情報の出し方もごく自然体です。製品やサービス(あるいはアーティストに関しても)の有名無名を問わず、本人がいいと感じればそれを気負わずに取り入れ、情報拡散する。

 

このZ世代は2022年以降、ますます消費の中心をなすといわれています。また、余談ながら、Z世代の親の多くは、2000年代半ばに「アラサー」と称された最初の世代です。この初代アラサーもまた、過去のブランドイメージに引きずられずに自分自身がいいと実感できた商品をてにする消費者層と指摘されていました。つまり、「初代アラサー」と「Z世代」のような人たちが消費シーンの中心となり、あらゆる業界の製品やサービスにおいて、過去のシェアなりブランドイメージにとらわれない商品評価を浸透させていく、と見ることができるわけですね。

ということは……です。強い商品を世に出すことができれば、企業の大小を問わず(業界の垣根すら越えて)、ヒット商品を生むことができるかもしれない。いきなりのメガヒットは無理としても、一定層が確実に振り向き、ファンとしてついてくれる可能性があるという話です。

 

ここでいう強い商品とは、いつも私がこのコラムで綴っている、「明確な旗を掲げた商品」という話にほかなりません。誰がなんと言おうが、この商品はこうあるべき、という「旗」です。2022年には以前にもまして、「旗」こそが重要になってくると思います。

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