menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

新技術・商品

第51話 想定外だった需要がヒットを生む

北村森の「今月のヒット商品」

商品のヒット現象って、どのようなプロセスをたどって生まれるものなのか。まあ、いろいろな経緯があると思いますが、そのなかのひとつに「商品の作り手側も想定外だったニーズが出現したからでは?」と感じさせるケースがあります。

 

古くはトヨタ自動車の初代「ソアラ」。1981年に登場した、2ドアの高級パーソナルクーベですね。仕事を長年頑張ってきた大人に向けたご褒美を、ともいうべき位置づけで開発されたと聞いたことがありますが、この「ソアラ」の流麗なフォルムと先進的な装備に、若年層までもが飛びついた。その結果、日本国内のクルマ市場に「ハイソカー(ハイソサエティ・カー)」ブームが巻き起こりました。その後の日産「シーマ」の爆発的ヒットにつながる流れを築いたのは、トヨタ「ソアラ」だったというべきかもしれませんね。

 

1990年代前半でいうと、ポケベルでしょう。ビジネスパーソンの緊急呼び出し用ツールだったのが、いつしか10〜20代のコミュニケーションツールとしても脚光を浴びました。その現象を受けて、90年代に入ると、以前からあった無骨な形状のポケベルだけでなく、かわいいデザインの商品が数々登場しています。

 

最近では「ワークマンプラス」が筆頭格といえます。「ワークマン」は現場仕事に携わる人のために、堅牢で、かつ耐風耐寒性能に長けた衣類を販売していましたが、そうした特徴に注目した若い母親層、あるいはバイク乗りといった一般消費者も店舗を訪れ、商品を買い求めるようになっていた。同社はそれを見逃さず、一般向けの新業態店をオープンさせるに至った、という話ですね。

 

で、ここからが今回の本題です。この商品、皆さんはもう購入していますか。

微アルコール飲料です。例えば、アサヒビールが今年(2021年)発売した「BEERY(ビアリー)」は、アルコール度数0.5%のビール風味の商品です。その後も、さまざまな商品が登場している状況。

 

こうした微アルコール飲料を各社が発売し始めたのには、もちろん理由があります。日本国内のみならず世界的にも、酒離れが一定にみられること。いやもちろんジャパニーズウイスキーブームなどは続いているのですが、その一方で、酒の飲み過ぎを避けようとする消費者が増えているのですね。だから、スマートなかたちでアルコールをたしなもうという人に向けた商品が必要になった。また、今後の人口減を考えると、そもそも酒類をさほど手に取らない消費者層をも振り向かせられるような商品を展開することは、メーカーにとって必須の策ともいえますね。これまで顧客としていなかった人たちも取り込まないと、市場は先細りとなってしまうわけですから。

 

そうした背景から、「ごくちょっとだけ酔う」といった感じになれる微アルコール飲料が続々と登場しているとみられますが、私、この夏から先月にかけて、「あっ、こんなところでも微アルコール飲料が!」という場面に何度も遭遇しました。どこか……。飲食店のメニューに微アルコール飲料が加わっていたんです。

 

9月下旬まで多くの地域で、飲食店での酒類提供が中止を余儀なくされていましたね。こればかりは致し方ありません。そのため、大半の飲食店は営業を止めるか、酒類を出さないかたちで店を開けていました。

 

暖簾を掲げていた飲食店にとって、酒類を提供できない事態が相当に厳しいというのは想像に難くありません。そうしたなかで、いくつもの店が微アルコール飲料を料理と一緒にメニューに並べていたという話です。

 

私、最初見たときは驚きました。「これ、店内で出していいんですか」と……。

いや、大丈夫だったようです。というのは、微アルコール飲料は商品カテゴリーのうえでは酒類ではなくて清涼飲料になるのですね(「ビアリー」の場合、缶を確認すると「炭酸飲料」と記されています)。

 

こうした動きには異論もあるかもしれません。コロナの感染拡大を防ぐための酒類提供中止なのだから、その趣旨を考えれば、たとえ微アルコール飲料であっても、アルコールが含まれる以上は出すのを避けるべき、というふうにです。

 

私にはそこをどう判断すべきか、答えを出せませんでした。ただひとつ言えそうなのは、厳しい逆風下でなんとか踏ん張っている飲食店にとって、微アルコール飲料の提供は必死の判断のすえであったのではないか、ということです。

 

結果として、微アルコール飲料は「普段さほど飲まない人」「それほど飲みたくない人」を取り込むというのにとどまらず、期せずして「すごく飲みたいのに飲めない状況にいる人」の渇望にも応える存在となりました。少なからぬ飲食店が提供に踏み切ったことで、微アルコール飲料の認知度も一層高まったはずです。

 

ヒットの契機はどこから? ときには意外なところから? 今回はそういう話でした。

第50話 業態転換、そのひとつのヒントが…前のページ

第52話 消費者が諦めていた部分に斬り込む!次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連セミナー・商品

  1. 《大ヒット商品・新流行》超トレンド予測

    音声・映像

    《大ヒット商品・新流行》超トレンド予測

  2. 2023年《大ヒット商品の作り方》

    音声・映像

    2023年《大ヒット商品の作り方》

  3. 2022年《超トレンド予測》

    音声・映像

    2022年《超トレンド予測》

関連記事

  1. 第78話 2024年のトレンド予想!

  2. 第18話 2019年は「値段が高いもの」が売れる

  3. 第66話 2023年のトレンド予想!

最新の経営コラム

  1. 第199話 中国車、先進国への輸出も急増

  2. 第九十二話 全社員でつくる信頼 アルミオーダー型材専門・関西金属製作所の挑戦

  3. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2026年1月28日号)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 健康

    第59回 湯田川温泉(山形県) 湯船は小さいほどいい!? 源泉供給量トップの湯
  2. 経済・株式・資産

    第89話 中国発資源インフレ再来か?
  3. マネジメント

    第65回 『相場の立つ人間』
  4. マネジメント

    危機への対処術(2) 家を二分して形勢を見る(真田昌幸の決断)
  5. コミュニケーション

    第60回 「一日早い、誕生日の贈り物」
keyboard_arrow_up