上田さんの牧場は、一つの牛舎で年間110から120頭繁殖、その後肥育して出荷しています。2つの牛舎があるので、200頭くらい出荷できます。さらに、ただいま、三つ目の牛舎が立ち上がるところです。
前回の訪問でもお伝えしましたように、上田さんの牛の特徴は安全性の高さです。上田さんは子牛の時に天然由来の抗生物質を2種類投与するだけで、あとは一切使いません。
最近は、多くの農場で、EUで禁止される抗生剤のモネンシンが使われています。モネンシンの効果には、腸の中の細菌をきれいにするので、餌の吸収がよくなることがありますが、モネンシンの副作用で、過食症(食べても食べも食べられる)の牛となり、非常に脂の強い、食べると脂酔いする牛となります。
上田さんはカロリーとビタミンのコントロールによって刺しを入れるという、多くの畜産家がしている、ある意味不健康な手法で刺しを入れておりません。上田さんは、カロリーで太らせるのではなく、タンパク質で太らせるというあまりないやりかたをしております。ちなみに、筋繊維に入れる脂肪は、流れる脂の不飽和脂肪酸だけです。ビタミンB群が良く生成されるように餌を作らないといけないのです。そのためまず、餌が違います。(参照下記の写真)健全なる脂肪組成をするために、180度で釜で煎った大豆を使います。高温で処理すると、大豆のウレアーゼという毒素を除去できるのです。
牧草は独自に輸入する無農薬、Non-GMOのジャイアントバミューダです。上田さんは、平成23年から格付けにこだわらず、食べて美味しいものにこだわっています。規格から自らの“理想像”(=お客様の喜び、価値)という構造ですね。まさにこれからあるべきやり方ですね。
現在雌の肥育には、雌は34ヶ月から40ヶ月位かけているそうです。下の画像の牛は、410の40ヶ月、枝で430キロくらいあるそうです。
子牛は、一年くらいから餌が吸収して身に着くようになるそうで、上田さんの牛の1日あたりの餌の量は、一般的には5.5?6キロだが、9キロ食べるそうで、でも脂肪が過多でないそうです。内臓脂がないから尻尾の付け根に脂がないです。餌が良く、内臓が健全だからおとなしいわけです。
ちなみに、黒光りした牛は脂肪がのり過ぎているそうです。毛並みとしては、もじゃもじゃした毛が良いそうです。
さて、加工場へ移動しましょう。
上田さんは安全の訴求をより高い次元で実現するため、繁殖から肥育、加工までを一貫して行い、末端に直接お届けすることで、販売側にメリットがあると考え、加工場を作りました。
今日、吊してあるのが、36ヶ月の雌と去勢です。左の写真が36ヶ月の雌です。見事な小豆色ですね。雌は脂肪を指で押すと、ふるふるします。こちら、真ん中の写真は去勢です。市場では、こういう見た目のほうが評価されるのが現状です。去勢の脂は、押しても固いです。
下の脂をご覧ください。Aが上田さんの肉を焼いた後の脂、Bが一般的な但馬牛の脂、Cが綿田さんの牛の脂です。こんなに固まりかたが違うのです。
今日も、ありがとうございました。
さて、本日のレポートの本題にいきましょう。上田さんの農場の近くの“秘境”に“超”オススメの料理屋があると言うことで20分くらい車を走らせます。今回、コーディネートをいただいている地元、豊岡市の綿田謙さんも知らない秘境の店です。着きました。寒いようで、駐車場の楓が紅葉してます。店までの道すがら、滝がたくさんあります。目当ての店が見えてきました。
店名は『滝見亭』です。今日は眺望が素晴らしい二階でお食事です。
まずは、八寸と小鉢が提供されます。八寸は、長いお皿に、左手前、菖蒲の花に見立てた茄子田楽、中央自鮎甘露煮、奥に、鯖の粽寿司です。手前にあるもうひとつのお皿には、カエルに見立てた胡瓜と水蕗が盛り込まれております。情景に見立てた盛り込みで、なかなか素晴らしいですね。粋です。ありがちな、山にある山菜料理店の域を超えてます。
続いては、岩魚のお造りで、酢味噌でいただきます。
続いては天ぷらで、紫蘇のような葉はイワタバコ、紫は雪の下、野三つ葉、独活です。
続いて、茹でたマコモダケです。そのままでもおいしいですが、木の芽味噌とマヨネーズが添えられていて、こちらをあわせてもおいしいです。
最後に、いろいろ入った五穀ご飯とお椀です。椀に入ってるアスパラのようなものが「山のアスパラガス」のシオデです。
料理もとてもしっかりしていて、山菜料理屋にありがちな素朴な域を超えた素晴らしい料理でした。素晴らしいロケーションでランチもいいですね。