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第21話 スタバの新店舗に行ってみた

北村森の「今月のヒット商品」

 2月28日にオープンした「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」を一般客として訪れてみました。東京の中目黒に登場した新業態の店舗で、この1カ月、結構な話題を呼んでいますね。「高級スタバ」などと表現されて…。

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桜の名所である目黒川沿いにあります。私が行ったのは、オープンから数日経った平日でしたけれど、2時間20分待ちましたよ。ただし、整理券を配布して、順番が回ってくればメールで告知してくれる仕組みを取っているので、呼び出されるまで並ぶ必要はない。

 

これはありがたかったし、実際のオペレーション上の混乱もありませんでした。店内のスタッフに尋ねてみたら、オープン直後の大混雑に比べれば、朝一番(7時の開店です)ならば待たずに入れるような日も出てきているらしい。ただし、3月下旬の桜の時季には再び人気は最高潮レベルに…。

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 中に入ってみました。4階構造で、すべてがスタバの店舗として機能しています。フロアの真ん中はぶち抜かれていて、何やらパイプのような物が縦横無尽に張り巡らされています。

 ここ、「高級スタバ」というより、「工場」なのですね。コーヒーを生豆の状態から焙煎して袋詰めするところまでの工程を、4フロア使って、来訪するお客に見せている感じ。その意味では「工場見学に訪れる」とか「テーマ性を帯びたアミューズメントパークを体感する」といった表現のほうがふさわしい気がしました。

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 コーヒー豆を扱っているスタッフに声をかけたら、気さくに作業の解説をしてくれました。そういう点でも、まさに工場見学の感覚。

 

 ただし、「高級スタバ」と呼ばれる意味も、なんとなくわかります。というのは、商品の値段がかなり立派だからです。この店舗、言うまでもなく、コーヒーがひとつの売りですが、ウイスキー樽の中でコーヒー豆を寝かせたというアイスコーヒーは税別で1200円です。そのほかの商品も、既存のスタバよりも総じて高い印象がありました。それをよしとするかどうかはお客次第ですね。ただ、「入場料のないテーマパーク」と思えば、少しは納得いくかもしれません。

 

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 ここに行くなら…。私はコーヒーなどを飲むより、3階のバーを目当てにするほうが面白いかも、と感じました。

 

 バースタッフがちゃんといて、丁寧にカクテルを作ってくれます。コーヒーを使ったカクテルも、もちろんあります。1杯2000円前後と、やはり値は張るものの、私が訪れた日には、桜の花びらをあしらったカクテルなど、独自性の高い1杯を提供していましたし、なによりバースタッフとの会話が弾むのがいい。それ自体がエンタメ性を十分に楽しめる要素として成立していました。

 

 「ああ、スタバがバーをしつらえたら、こうなるのか」という感慨がありましたね。ちなみにスタッフは、全国のスタバから選りすぐりの精鋭がここに集結している、と聞きました。

 

 今、スタバは日本国内だけで約1400の店舗を展開しています。今回訪れた「ロースタリー」は世界で5つめといいます。シアトル、上海、ミラノ、ニューヨークの次にできたそう。

 

 スタバが国内に進出した当初は、どこか特別な空間という印象がありましたけれど、全国津々浦々に1400もの店舗ができている現在、かつてのような非日常感は薄れつつあります。今回の「ロースタリー」のオープンは、スタバのブランド力を再び高めるための一策と言えるかもしれませんね。

 

 私、常々感じていることがあります。「一度成功したブランドが次になすべきことは何か」…。それは自らのブランド価値を信じることではないかと思うのです。追随企業が勢いを伸ばしていったからといって、浮き足立ってリニューアルをかけたり、カギとなるコンセプトをブラしたりしては、元来有していたブランド力を削ぐ結果を生みかねない。

 

 スタバはそもそも、お客がここですごす空間と時間の質が一番の売りではないか、と私は思います。そこが、後発組である、いわゆるサードウェーブコーヒーのチェーンとは異なるところ(日本にも進出している「ブルーボトルコーヒー」は、サードウェーブコーヒーの旗手と称されますが、同店はコーヒーの味が一番の売り)。

 

 その意味から考えると、スタバの新店舗である「ロースタリー」は、まさに「コーヒー工場そのものに身を置く空間と時間」を訴求する存在ともいえそうで、元来のブランド価値とぶつかっていない。そこが巧みであるし、何らブレていないところが強み、と感じさせましたね。

 

 ブランド力の再強化にあたっては、ただただ高級路線を取ればいい、というわけではない、という話です。

 

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