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社長業

第9回 幹部には何が必要か

繁栄への着眼点 牟田太陽

 ある会社の事業発展計画発表会に参加した時のことだ。
 懇親会の席で、無門塾のOB7名とともに壇上に上げられたことがあった。「幹部に何を求めるのか」など、自社の社長には直接聞けないようなことを質疑応答で受けて欲しいというのだ。
 突然のことで驚いたが、お酒も入っていたし皆笑いも交え一問一答和やかに進行をした。
 そこで私に質問されたのが、前述した「幹部に何を求めるのか」というものだった。
 「全体最適で見られるような目が必要だ」ということを話したが、驚いたことに「全体最適」という言葉に対して、皆きょとんとしていた。言葉を知らないのだ。
 会社というのは、営業であったり、製造であったり、総務であったり様々な部門の集合体である。「金庫は一つ」とはよく言うが、実際はそれぞれの部署が「部分最適」となっていて自部署ファーストであることが多い。
 営業は仕事をとってくるのが仕事で、とってくれば「自分はこんなに稼いでいる」と社内で胸を張るが、製造現場のスケジュールなど微塵も考えてはいない。製造は営業がとってきた仕事内容に、「こんな粗利益率の低い商品を、こんな短納期でとってきやがって」と文句を言う。総務は銀行にいい顔をしたいがために、やたらとお金を借りることばかりを考え、次の時代への投資に対してはいい顔をしない。そうはなってはいないか。
 懇親会の席で「全体最適」と「部分最適」について丁寧に教え、最後に言った。「では、全体最適で見られるようになるためには、どうしたらいいかというと、日本経営合理化協会の幹部塾に参加することだ」全社員が笑っていた。
 それは冗談だが、早いうちから幹部になるべき人間には「全体最適」で見られるよう「経営」についての教育が必要だ。根気がいる。
 会社に絶対に必要な「新規開拓」について考えてほしい。
 私が会長をやっている日本印刷でも新規開拓のチームがある。各部門から有志で集めた7人のチームだ。プロジェクトチームであるから、それぞれ普段の業務をこなしながら新規開拓のプロジェクトにあたらないといけない。しかし、少しでも普段の業務に支障が出れば、上司はいい顔をしないだろう。それどころか「新規開拓チームのせいだ」と言うかもしれない。自分の部署を預かる者として、そう考えるのは仕方がないことだ。
 では、新規開拓の費用はどうか。
 どの部署で費用を持つのか、出た利益はどの部署の数字になるのか、出た粗利益をどうするのか。本来、新規開拓というのは利益が出てはいけない。出た利益をまた次の新規開拓への投資をしないといけないからだ。そうして、時間も、労力も、費用をかけても今の時代、新規のお客様を獲得するのは難しい。報われない。だから社員はやりたがらない。
 しかし、それでは会社はジリ貧になってしまうだろう。
 「金庫は一つ」会社全体として、次の時代のお客様を育てていく努力は絶えずしていかなくては生き残れない。
 幹部とは会社にとって「樹の幹」である。社長の考えを末端まで伝える重要な役割だ。その幹の太さで会社の成長は決まる。経営感覚を持った幹部の育成次第なのだ。 大きな樹の周りには様々な木が集まる。「千年体系」永く時代を見つめ続ける巨木のような会社をつくってほしい。
※本コラムは2019年10月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

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