「世の中にない、いいモノをつくろう」と化学技術者一筋の有田浩三氏(69歳)は6年前、役員定年後、
未経験の「できる限り髪と肌にやさしいシャンプーづくり」に挑戦し、開発・販売会社の有限会社あんだんてを立ち上げた。
シャンプーは高級アルコール系85%、石けん系 5%、アミノ酸系10%という市場である。
その中で、注目を集めているのがアミノ酸系である。このアミノ酸系を主剤としたシャンプーづくりに挑んでいる。
会社を起こしたきっかけは、掛け値なしで、いいモノを市場に出すには自分でやるしかない、という結論に達したからだ。
有田氏は東京生まれで、有名校の都立小山台高校、慶応義塾大学工学部応用化学卒である。
日東化学工業(現三菱レイヨン)に20年、川口化学工業(東証2部)で20年、
一貫して研究畑とプロセス設計の専門家として働いた。
同社の商品は身体にかかわりの深いアミノ酸、糖類、脂肪酸などの特性を活かし、使用感の良さが特徴である。
使用感で言えば、「きめ細かく心地よい泡立ち」 「肌と傷んだ髪に潤いとつやが出る」「ヘアカラー(白髪染めも)、
ヘアマニュキュアの色が長持ち」「リンスがいらない分、楽で肌への刺激も少ない」「洗面器、浴室の汚れが少ない」など。
シンプルイズベストの考えで配合設計しているという。
だから、シリコーン系コンディショニング成分、増泡成分、増粘成分は一切配合していない。
いいモノづ くりに挑戦しているだけに、商品にはかなり自信を持っている。
有田浩三社長は日本化粧品技術者会正会員で、シャンプーづくりの専門家である。
単純に、天然シャンプーでなければいけないというものではないという。
アミノ酸系を主剤としたシャンプー、石けん系シャンプー、そして、高級アルコール系シャンプーと、
すべてのシャンプーの特徴に詳しい有田氏は、ユーザー側の体質や好みなどの状況に応じて選べばいいという。
有限会社あんだんての「あんだんて」は音楽用語で、
ゆっくり歩く速度の感覚で、「焦らずゆっくりやろう よ」の精神からネーミングした。
有田氏の経営信条は「基本に忠実に」「本当にいいモノを使ってもらう」である。
「基本を大切に」が口ぐせである。化学技術者らしい発言である。
「基本」の上に、「異なった視点」で新しいモノづくりが始まる、という考えである。
汎用品にはない特長を活かしたマーケティングをして行こうと考えている。
有田社長はサラリーマンから役員定年後、63歳で会社を起こしたが一番大事なこと は何か、
と問われれば、「人間関係」「仲間」「友人」、つまり、「人」に尽きるという。
顧客のニーズを的確に把握して、開発に活かしてこそ、本当にいいモ ノづくりができることを実感したという。
上妻英夫