menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

万物流転する世を生き抜く(42) 石田三成を翻弄する家康の智謀

指導者たる者かくあるべし

 時計を関ヶ原の合戦から少し巻き戻してみる。
 
  石田三成と徳川家康との間に興味ある事件が起きる。三成は家康に窮地を救われているのだ。その後の天下分け目の関ヶ原に至る政治劇の伏線となるので書いておく。
 
  慶長4年(1599年)閏(うるう)3月3日に、五大老の重鎮である前田利家がこの世を去ると、秀吉遺臣たちの間で葛藤が噴出した。
 
  同夜、加藤清正、黒田長政ら野戦派大名の七将が三成を襲う動きを見せ、三成は翌日大坂を脱出して、伏見城内の自邸に逃れた。
 
  七将の不満は、朝鮮の戦役に対する論功行賞にあった。「三成ら実務官僚派は、命を懸けて戦った自分たちを現場も知らず公正に見ていない」というものであった。
 
  さらに、背景には、三成らが太閤検地を通じて押し進めようとしていた中央集権化の動きへの根深い反発があった。
 
  野戦派の武将大名たちは元来、自分たちの力で領地を守り拡大する「自力救済」の性向が強い。大名の統治権に手を突っ込み、中央の権威で全国一律の統治を進める三成とは相容れない。
 
  三成に反発する豊臣諸将の多くは、対抗するため、自分たちの利益代表として家康を担ごうとしていた。
 
  三成が逃げ込んだ伏見城には家康がいる。これまで何度も、三成が家康の暗殺を狙っている、との噂が流れている。まさに“窮鳥(きゅうちょう)、懐(ふところ)に入る”である。
 
  さて家康はどうしたか。
 
  「三成を引き渡せ」と兵を率いて伏見城を囲んだ七将と三成の間で斡旋に入ったのだ。
 
  三成の政界引退と居城の近江・佐和山城での蟄居を条件に、三成の命を救い、佐和山まで送り届けた。
 
  このあたりの家康の判断は、高度に政治的だ。心の中をはかれば、こんな所か。
 
  「五大老のうちで秀吉の遺訓によって事後を任された二人のうち、前田利家は死んだ。豊臣遺臣の中でも自分を待望する声は高まっている。天下取りは近い。しかし、秀吉の遺臣の中にはまだ、遺児の秀頼を慕う向きも多い。ここは焦らず……」
 
  三成には恩を売った。しかし、いずれ三成は勢力を糾合して決起する。それならそれで、生かしておいた三成に期待する勢力をあぶり出して一気に叩き潰せばいい。
 
  「決戦は避けられまい。それに備えることだ」
 
  そして1年後、隠居したはずの三成は、家康の智謀に吸い寄せられるように「逆臣家康を誅殺せよ」を掲げて決起する。(この項、次回へ続く)
 
 ※参考文献
 
『関ヶ原の役 日本の戦史』旧陸軍参謀本部編纂 徳間書店
『関ヶ原合戦 家康の戦略と幕藩体制』笠谷和比古著 講談社学術文庫
『大いなる謎 関ヶ原合戦』近藤龍春著 PHP文庫
『関ヶ原・敗者たちの勝算と誤算』武光誠著  PHP文庫
『勝つ武将 負ける武将』土門周平著 新人物文庫
 
 
  ※当連載のご感想・ご意見はこちらへ↓
  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万物流転する世を生き抜く(41) リーダーの人間力が勝敗を分けた関ヶ原前のページ

万物流転する世を生き抜く(43) 三成の駆け引きを知り尽くした家康次のページ

関連記事

  1. 交渉力を備えよ(42) 国際間の利害方程式を読み解く

  2. 情報を制するものが勝利を手にする(15)
    人材教育の伴わない改革は意味がない

  3. 交渉力を備えよ(22) 確約は直接会って取れ

最新の経営コラム

  1. 第32回 経営改善のヒントが見つかる「3つの点検」

  2. 挑戦の決断(41) 新しい国の形を求めて(徳川慶喜・上)

  3. 第58回 奥塩原新湯温泉(栃木県) 肌が生き返る!?天然の泥パック

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 製造業

    第157号 強靭な精神力を養う3つの思考法
  2. 戦略・戦術

    第37話 「有償解除って…」
  3. キーワード

    第131回 シリコンバレー視察レポート
  4. マネジメント

    第8回 こだわりを売り上げにリンクさせる理念経営者とは?~事例:ホールフーズマー...
  5. 戦略・戦術

    第63回『偶然を活かす』~事業飛躍は、計画では無く偶然~
keyboard_arrow_up