SNSは、個人だけではなく企業にとっても重要なツールになりました。
一方で、「どんな情報を発信すればいいのか」「どのSNSを使えばいいのか」「炎上が不安だ」などスタートの段階で悩んでいる企業も少なくありません。
そこで、無理なく続けられるSNSマーケティングのコツを一般社団法人SNSエキスパート協会代表理事の後藤真理恵さんに伺いました。
SNSが重要になった背景
―—後藤さんが代表理事を務めているSNSエキスパート協会は、どのような活動を行っているのですか?
2016年に設立された団体でSNSに関する教育検定事業を手掛けています。学生さんからビジネスパーソンまで様々な方が検定を受けています。
受講者数はすでに5500名を超えており、関心の高さを表していると思います。その他、SNSリスクマネジメント検定や研修、執筆などSNSの知識を広げるための様々な活動を行っています。
――SNSの必要性が高まってきた背景を教えて下さい。
まず理解して頂きたいのが、SNSの立ち位置。総務省の通信利用動向調査によれば、SNSの利用率は伸び続け、今や8割を超えています。一方で日本人の人口は毎年減少しています。
――人口が減少しているにもかかわらず、SNSの利用者は伸びているというわけですね。
では何のためにSNSを使っているのか。暇つぶしに使っていると思われがちですが違います。
これも総務省の調査なんですが、日本人がSNSを使う2大目的の一つがコミュニケーション、もう一つが調べ物をするためです。
コミュニケ―ションには、家族や個人同士の繋がりだけではなく、自分が好きなブランドとか、企業、有名人などとの繋がりもあります。
――SNSをチェックしていると、テレビよりも早く情報を入手したりできますよね。
とくに経営者の方達に見て欲しいのは、消費者白書のデータ。「商品やサービスの購入を検討する時に、何の情報を重視しますか」という質問です。
30代以上で多かったのは、店頭や店員さんからの情報でした。それに対して、10代から30代ではSNSでの口コミと評価。この世代は、これから消費者層の中心になる世代。Z世代も含まれています。
出典:令和4年版消費者白書 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/assets/2022_whitepaper_0003.pdf
この年代の方達をお客様にしていく企業がほとんどである以上、自社の商品やサービスをご購入いただくにあたってSNSを通じて情報収集してもらったり、口コミや評価を見てもらったりすることは必要不可欠。
そんな時代に入ったのです。
このようなことも踏まえて、企業や団体がSNSを活用すべき理由として4つあげられます。
一つ目は、企業がお客様に直接、情報発信ができるようになること。これは説明不要ですね。二つ目は、企業としても情報収集にSNSを活用できるということです。
――企業がSNSで自社の情報を検索するということですか?
そうです。いわゆるエゴサ―チですね。マーケティング施策の一つで「ソーシャルリスニング」と呼ばれています。
たとえば企業名、ブランド名、商品名、サービス名などで検索すると、一般の御客様の疑問、不満、要望などが流れていることがあります。
そこに潜在ニーズを見つけ出して商品開発やサービス開発、顧客サポートなどに活かすことができるわけです。それによって、お客様の満足度向上、売上向上などにつなげられます。
すでに大企業をはじめ、多くの企業が、このような情報収集や分析にSNSを活用しています。皆様方も、ぜひ積極的に活用することをお勧めします。
――いろいろな活用方法があるのですね。
3番目は、コミュニケーションツールですね。
SNSを使えば、コメントのやりとり、ダイレクトメッセージのやりとりなどによって、どの企業も、普段、おつきあいのあるお客様だけではなく日本中、あるいは翻訳機能も付いているので世界中のお客様とやりとりができるようになりました。
これによって会社の認知をあげたり、あるいは商品、サービスの認知を上げたり、興味をもっていただいたり、購入につなげたり、お客様の満足度をあげてロイヤリティの高いお客様に育てていったりといったこともSNSによって可能になります。
そして最後、4番目は情報拡散ですね。SNSは「シェア」とか「リポスト」とか指一本で、情報を拡散できる機能がついています。
次々に拡散の機能が使われれば、日本中、あるいは世界中に情報が広がっていく可能性もあります。これは企業様にとって非常に大事なことなのです。たとえば、企業から発信した情報を、一般のユーザーが面白いと思えば、シェアしたりリポストしたりして情報を拡散していきます。
それによって、短期間で多くのユーザーに情報が広まる「バズ」と呼ばれる現象が起きます。これは企業が発信した情報とは限りません。
一般の御客様が、この商品を使ってみたら便利だったと誰に伝えるでもなく口コミ投稿したら、その情報が拡散し、結果的に発売元の会社に問い合わせが殺到する。そういうことも起こります。
口コミのことをマーケティング用語では、ワム(Word of Mouth)とか、UGC(User Generated Content)、一般の人が生成したコンテンツという呼び方をしたりもします。
もはや時代は変わり、ホームページ、メールマガジン、テレビコマーシャル、新聞広告だけでは不十分。ぜひSNSも情報チャネルの一つとして取り入れるべきでしょう。