menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

情報を制するものが勝利を手にする(7)
一歩遅れたものは、その責めを一生背負う

指導者たる者かくあるべし

 1989年は歴史を揺るがす画期的な年となった。同年11月9日、東西ベルリンを隔てていた壁が崩壊し、第二次大戦後の世界を縛り続けた東西冷戦構図に風穴が開いた。それは破れた堤防から流出する奔流となって、ドイツ統一、ソ連の崩壊へ繋がり、世界地図を書き換えた。

 東西両陣営の盟主だったソ連、米国の指導者も望まなかった急速な変革はなぜ起きたのか。

 背景を探ると、歴史の流路を見抜いた東欧のある小国のリーダーたちの、時を逃さない決断と確信に裏付けられた粘り強い行動が浮かんでくる。一方、流れに乗り遅れた国々のリーダーたちは、混乱の中で歴史の舞台から消え去ったのである。

 “鉄のカーテン”消滅のドラマが示すのは、リーダーに必要な能力とは、目の前の権力抗争、権力維持の才能ではなく、決して逆流しない歴史の流れの行方を見抜く力ということだ。

         ◇

 ベルリンの壁が崩壊するほぼ1か月前の10月6日、ソ連共産党書記長ゴルバチョフはベルリンに着いた。社会主義陣営の最前線、東独の建国40周年式典に出席するためであった。

 ゴルバチョフは、書記長就任以来、グラスノチ(情報公開)、ペレストロイカ(改革)を旗印に国家の立て直しを進めている。

 米ソ間の軍拡競争での軍事費増大と、最大の輸出品である原油価格の暴落で疲弊したソ連経済の立て直しが、1985年に書記長となった彼の最大の課題だった。あくまで「社会主義体制の枠内での改革」だが、民主化改革は避けられないと考えていた。

 ソ連からの経済支援に頼ってきた東欧各国に対しても、「自主経済を目指して改革に向かえ」と繰り返している。

 翌日の式典で、東独国家評議会議長・ホーネッカーの演説は、旧態依然だった。

 「西側諸国の大量の失業者を見たまえ。わが国には失業者もホームレスもいない。科学分野でも先端技術の開発は順調である」。民主化への言及はひとこともなかった。

 ベルリン到着後、ソ連大使館を取り囲んだ市民のデモ隊が、「ゴルビー、ゴルビー、われわれにも民主化を」と叫ぶのを見たゴルバチョフは、渋面で演説を聞いていた。

 式典後、ホーネッカーと社会主義統一党政治局の幹部たちを前にゴルバチョフは、ソ連の民主化の取り組みについて、「困難な道だが、やり遂げねば、生き残る道はない」と語りかけた後で、冷ややかに言い放った。

 「一歩遅れた者は、その責めを一生背負うことになる」

 ソ連の政策に従順であり続けた社会主義陣営の優等生、ホーネッカーは11日後、失脚した。(次回に続く)

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

参考文献

『ゴルバチョフが語る冷戦終結の真実と21世紀の危機』山内聡彦・NHK取材班著 NHK出版新書
『1989世界を変えた年』マイケル・マイヤー著 早良哲夫訳 作品社
『1989年 現代史最大の転換点を検証する』竹内修司著 平凡社新書
『東欧革命—権力の内側で何が起きたか』三浦元博、山崎博康著 岩波新書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情報を制するものが勝利を手にする(6)勝ったエリザベスの失策前のページ

情報を制するものが勝利を手にする(8)ハンガリー指導部の大胆な挑戦次のページ

関連記事

  1. 挑戦の決断(29) 忖度(そんたく)は決断にあらず(明治維新と廃仏毀釈)

  2. 決断と実行(10)日本海海戦<常山の蛇勢>

  3. 逆転の発想(9) 圧倒的敵に立ち向かうリーダーの決断(曹操、織田信長)

最新の経営コラム

  1. 第103回「惜しげもなく捨てる経営が、成長の推進力」サイバーエージェント

  2. 第176回「アラカルトでこそ、気配りの差がつく」

  3. 第25回 百年体系

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 戦略・戦術

    第125話 少人数私募債は、資本性借入金です
  2. 人間学・古典

    第30話 「日本でできた漢字もある」
  3. 社員教育・営業

    第13話 成長課題 管理職の部下育成術(13)
  4. 社員教育・営業

    第43講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ  動物病院編(3...
  5. 経済・株式・資産

    第19回 テレビCMの利用価値を再認識させる効果「トリドール」
keyboard_arrow_up