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国のかたち、組織のかたち(105)発明の権利は誰のもの(404特許訴訟)

指導者たる者かくあるべし

 職務発明の対価

 企業に雇われた技術者が職務として行なった発明の対価はどう計算し、発明者に配分すればいいのか。前回まで見てきたAI(人工知能)技術発展に貢献するNAND型フラッシュメモリーを発明した升岡富士雄と東芝の関係でも明らかなように、特許法上、微妙な問題をはらんでいる。
 升岡が東芝を相手取って起こした訴訟に先駆けて、巨額な対価を求めた訴訟が提起されている。照明分野で画期的な成果をもたらした青色LED(発光ダイオード)技術を支える製造方法の発明をめぐり2001年に東京地裁に起こされたいわゆる「404特許訴訟」だ。
 訴えたのは、徳島県に拠点を持つ化学メーカーの「日亜化学工業」の元社員で、のちにノーベル物理学賞を受賞(2014年)する中村修二だ。中村が、日亜化学に求めたのは、なんと200億円という巨額で、訴訟の行方はメーカー企業の経営者と技術者たちの注目を集めた。



 画期的な一審の判断から二審での和解

 中村が発明したのは、高輝度青色の発光ダイオードの製造に必要な基盤に窒素化合物を吹き付け定着させる技術だった。ガス化した素材を吹き付けるだけでは素材が吹き飛び結晶化しないのが難点だったが、中村は別のガスを押し付けるように被せて吹き付けることで、結晶の成長を促す技術を世界に先駆けて開発した。この技術は1990年に特許出願されて、1997年に特許登録された。
 この発明・特許取得によって一地方企業だった同社は、世界的メーカーに急成長を遂げた。中村は、この発明の貢献度は100%自分にある、として、600億円を超える社の利益のうち200億円の追加対価を請求した。
 東京地裁はまず、特許権は会社が中村から譲渡を受けているという会社側の主張を認めた上で、2004年1月、発明の貢献度の50%は発明者の中村にあるとして、会社側に不足対価のうち、中村が請求する200億円を会社側は支払えという画期的な判断を示した。
 会社側は東京高裁に控訴。高裁は両者に和解を勧告し、延滞金を含めて8億4000万円の支払いで決着した。



 技術人材の海外流出はチームワークにこだわる日本システムの反映

 裁判の過程で、中村は、青色LEDの将来性に着目して創業者社長に掛け合って研究開発費10億円を得たことを明らかにし、当時の社長には感謝しているとしながらも、経営トップの代替わりでこの研究から撤退することを要求され、独自に研究費を工面して発明にたどり着いたことを明らかにしている。
 訴訟に先立って中村は、「もはや、日本企業での研究には限界があり続けられない」として退社して渡米、2005年には米国籍を取得し研究を続けている。
 2014年のノーベル賞受賞も「米国市民」としてであり、同年の文化勲章受賞時にも官報には、「アメリカ合衆国人中村修二」に勲章を授与すると記載されている。
 優秀な研究者、頭脳の海外流出が止まらない。その理由について、中村は自著で不満を込めて書いている。
 「特に優秀な理系の人間にとって、日本で働くのは大変なことだと思う。なぜなら日本のシステムは、チームワークによる共同研究や技術開発が主で、優秀な社員の力を正当に評価してくれないからです。せっかくアイデアを出し、実際に自分で動き、結果を出しても、会社やチームに手柄を横取りされてしまい。いい仕事をしても評価されず、給料も横並びで同じでは、モチベーションが上がるはずがない」
 ワールドカップサッカーで健闘した日本代表を見ても同じ思いがする。日本を飛び出して、個の力を重視するヨーロッパのクラブチームで揉まれて「個を磨いた」選手たちが、躍動する姿に新しい日本サッカーの姿を見る。「日本チーム健闘の原動力は世界に誇れるチームワーク」と繰り返して書くメディアは、旧態依然の日本社会優秀論から抜け出せていないのではないか。
(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

※参考資料
 『ごめん!青色LED開発者最後の独白』中村修二著 ダイヤモンド社

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