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- 第29回 『あきらめない、迷わない、逃げない』
(著:小比類巻貴之)
講演先の福岡で、サッカーワールドカップ、日本―コートジボワール戦を
後半だけTV観戦しました。
実は、ワールドカップを見たのは、これが初めてです。
サッカーの試合をテレビで見たのも初めて。
45分超、かなり集中して見ていたのでしょう。
試合後、どっと疲れが出ました。
まるで、自分が出場していたかのように(笑)。
"サポーター"という言葉の意味が
初めて実感できた気がしています。
残念ながら負けてしまいましたが、見る価値は十分ありました。
国を代表するトップ選手が集い、極限ともいえる状態の中で
しのぎを削る試合だけに、勝ち負けを超えたものを感じました。
特に強く感じたのは、心の在り方です。
同点、逆転と劣勢になっていく中、
日本選手が精神的に追い詰められていく様子が
画面を通じても見てとることができました。
「自分に負けた」という香川選手の試合後の談話を目にし、
最近読んだ一冊に書かれていた一文を思い出しました。
「経験からいえば、身体の状態よりも、心の状態こそが、
勝敗を分ける」
『あきらめない、迷わない、逃げない。』
小比類巻貴之 (著) です。
K-1 MAXの日本王者に3度輝き、"ミスターストイック"と呼ばれた男。
魔裟斗選手らとともに人気絶頂期を支えた一人です。
著者の試合をご覧になった方も多いのではないかと思います。
本書では、世界のトップレベルで戦い続けた経験、
また、近年は指導者として後進の指導、さらにはビジネスマンに講演も行う中で
培われた、心の在り方、整え方が、じっくり説かれています。
アスリートはもちろん、
ビジネスマンや社会人にとって
非常に学ぶところの多い一冊です。
そのまま取り入れられるところもありますし、
ご自身の立場に置き換えてみることで
他にはない大きなヒントが見えてきます。
たとえば、強い選手の共通点とは、
「有利なときも不利なときも、けっしてファイティングポーズ
をくずさないこと」
と語っています。
つまりは、いつでも油断することなく、慌てることなく、
すぐ次に動ける状態を保つ、ということです。
それは心においても同様で、
「強い人は、心もファイティングポーズをとっているのだ」
といい、この心の状態を"心の平熱"と呼んで、
何度も繰り返し述べています。
「格闘技界でもトップまでのぼりつめる選手はほぼ例外なく、
人を強く思いやる心や、素晴らしい心を持っている」
「道徳心のある人は、例外なく心に余裕がある。心に余裕があれば、
多少のことでは平熱が揺るがない。だから、いつでもいい状態で
チャレンジしつづけることができる」
また、人材育成の方針も見どころです!
「道場主として、僕がいちばん気をつけているのは、
選手たちに「3+1」のリズムを意識して試合を組むことだ。
まず、勝ちが見込める試合を3回組む。そこで3連勝したうえで、
4回目に勝てるかわからないような格上の相手との試合を組むのだ」
なぜ3+1のリズムで試合を組むのか?
リーダー、指導者は、ここだけでも必読ですね。
加えて、個人的には、
「人間関係を築く力と格闘技でうまい間合いをとる力は完全に比例する。
人付き合いがへたな人はなかなか間合いのコツをつかめない」
という下りが、目からウロコでした。
実に学び多き一冊です。
尚、本書を読む際におすすめの音楽は、
ハービー・ハンコックのアルバム
処女航海/amazonへ
海の中で"心の平熱"を感じ、保つごとく、
音楽を聴き、読書をお楽しみください。
では、また次回。