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戦略・戦術

第二話 下請け製造業で価格競争から脱却する方法

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは!
1位づくり戦略コンサルタント
佐藤元相です。
 
 
1位づくり戦略を実践している、東大阪の町工場の成功事例を紹介しましょう。
東大阪で切削加工が得意な町工場があります。
株式会社永田製作所
3代目代表取締役 永田弘社長
 
会社設立は1958年、従業員数は30名(2018年4月現在)で、永田製作所は近畿大学に隣接する住宅街に本社工場があります。
 
今から6年前の2012年、永田製作所の業績はどん底でした。
もともと、永田製作所ではミシン部品や精密機器部品に関わる企業や商社から、生産部品の受託をしていました。
 
取引先は先代の頃から固定しており新規開拓の営業活動はほとんどしていませんでした。
 
「うちには精密加工の技術力がある!」と、自負していました。
ですから営業活動はしなくても仕事がやってきた時代もありました。
しかし、そうだからといって業績が安定していたワケでもありません。
 
親会社の業績の善し悪しで下請け会社の業績は大きく影響をうけるものです。
 
 
 ・海外企業との価格競争
 ・土地・人件費の高騰
 ・構造不況
 ・デフレ
 ・景気の停滞
 
半端なく厳しい状況の中、踏ん張って町工場を守ってきたのが現状です。
 
そこにリーマンショックの影響で、発注企業からのコストダウンの要請はより厳しくなりました。追い討ちをかけて受注金額が激減しました。
永田社長は強い危機感を持ちました。
 
やるか!
やらないか!
 
下請け依存から脱却を決意しました。
 
しかし、何をどうすればいいのか?わかりませんでした。
当時の永田製作所は、3~4社ほどの得意先からの受注に頼っており、そのうちの1社からの仕事が60%以上になっていました。
 
 
目標設定の重要性
経営面でのリスクを考慮すると、1社からの受注は全体の20%以下に抑えておきたいもの。
そう考えた永田社長は受注先を30社以上に増やす目標を立てました。
 
そのためには、自社の生産体制の強化と技術力の向上を図っていかなければなりません。
現状、親会社(元請け)から提示される金額に従わなければならいため、ろくに利益も出ていませんでした。
 
設備を増強するなど先行投資できる資金の余裕はない!
そこで3000万円以上の設備投資ができるくらいの利益を確保する!ことを彼は目標にした。
 
しかし現実は、自分なりに考えた利益を見込んで見積もりを出すと、「親父さんよりずいぶん高い見積もりを出すんだなぁ」と一蹴されました。
 
前社長は「良い仕事をして、1円でも安く提供すればお客さんは喜んでくれる」
と考えていました。
見積もりは取引先が提案してくる指値(金額)をそのままうけいれていました。
 
 
また資材発注の担当者からは「この見積もり金額より5円安く提示してくれたらおたくに
仕事を発注できる」といってくることも多々ありました。
それは取引先と良好な関係がデキている証拠だと思っていましたが、あとになって勘違いしていたことに気付きました。
実際には、いいように使われていただけでした。
 
経営戦略も販売のやり方も全く分からない。
そこで 2012年2月に永田社長は1位づくり戦略を学びました。
 
永田社長は、「自社の価値をお客さまに理解してもらえるようにアピールする方法」と
「自社の価値を認めてくれる取引先を獲得する」という2点に向けて取り組みをはじめました。
 
 
まず着手したのは、自社の強みを探すことからでした。
前社長は、ひたすらコストカットを意識していたが、お客さまの方では、「自社どんな所を
評価していたのだろうか?」と考えました。
 
早速、取引先に話しを聞いてみると、「あなたのところは納期に遅れず、むしろ早いから安心して任せられる」という答えが返ってきました。
 
 
永田製作所では、材料から切削加工で金属部品を削り出し、熱処理後に仕上げの
研磨を行って納品するまでの一連の作業工程を、他所へだすことなくすべて一元管理をしています。(熱処理加工と表面処理加工以外)
 
そのため、工程は納期回答をした当初の想定から大きく外れることがなく、納期管理が徹
底されていました。
 
 
資材担当者からすれば、永田製作所に発注することで「万一問題が生じても、それがどの
工程で発生したのかということについて、原因究明と改善のための品質管理が担保され
ている」ということになるのでしょう。
 
また他の取引先をインタビューして分かったことがありました。
・自社に製造設備を一貫して持っている
・納期が早い、確実な回答が得られる
・外注に出さないので、品質管理が容易
  ・技術的な打合せが、営業マンとできる
  ・ミシン部品で培った熱処理後の仕上げノウハウがある
  ・円筒研磨ではなく、切削仕上げに驚いた
などの情報が集まりました。
 
これか!
 
 
永田社長は、自社の強みは「一元管理による熱処理工程が必要な精密金属加工である!」
ことを発見しました!
 
その全工程を任せてもらうことで、お客さまに大幅なコストダウンと製造日数の短縮を
提供することができる。
 
ここを付加価値としてアピールすれば差別化できると考えました。
 
 
「切削達人」の永田製作所
「熱処理工程のある製品」を独自のノウハウで仕上げる切削専門会社
 
自社の価値を言葉にして明確に打ち出しました!
次に永田社長は、自社の価値を理解してくれる新規取引先の確保に向けて取り組みを始めました。
 
まずはWebサイトのリニューアルに着手しました。
当たった!
反響があった!
これまで全く反響の無かったWebサイトから次ぎつぎとメールで図面が送られてきました。
 
永田社長は「これからは町工場の時代。強みをしっかり見つけて商売すればまだまだやれる!」と確信したと言います。
 
 
つづく。。
次回は新販路開拓についてお話をします。
お楽しみに。
 

第一話 お客視点とは!前のページ

第三話 下請け町工場の新販路開拓のやり方次のページ

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