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戦略・戦術

第五十七話 店のシャッターをメッセージボードにしてコミュニケーションを図る焼鳥屋 その1

中小企業の「1位づくり」戦略

とにかく入りにくい焼鳥屋

 大阪の東岸和田市で営業する焼鳥屋さん「彩鳥屋てっちゃん」

 

 駅からはやや離れており、店の前の道はやたら狭いうえに車の通りが激しく、自転車をとめておくスペースすらありません。

 

 駅から離れているので、何かのついでに立ち寄る場所ではないし、たまたま店の前を通りかかっても歩行者が自転車、車の通行の邪魔になってしまうので、おちおち立ち止まってもいられないという立地の悪い場所です。

 

 それでも味は評価が高く、それなりにお客さまは来店していました。

 

 しかし、創業3年目の頃です。近所に5倍くらい大きな焼き鳥屋さんができてしまいました。 ライバル店はとてもきれいで、駐車場スペースも有り、価格も安い。それに対して自分の店は、小さくてみすぼらしい上に、やたらと入りにくい。

 

 店主の早崎哲生さんは、「このままじゃまずい」と思ったのでしょう。何かのヒントがあればと私が主催する「あきない実践道場」に学びに来られました。

 

 その中で、顧客の現状調査をする為、インタビューを実施しました。

 

 経営をより良くするためには、顧客の情報を集めて分析することから始めなければなりません。「 お客様が何を考え、行動しているのか?」 を知るためには、直接お客様にインタビューをするのが一番よい方法なのです。

 

 「アンケートではダメですか?」 と言う方も時にはいますが、直接インタビューをして考えを引き出す方法と比べると情報が抽象的で曖昧なものや。 簡潔に書かれた言葉を深掘りできないこともあるので、私は進めていません。

 

 早崎さんは、顧客インタビューから情報を分析した結果、集客方法はこれが最適だろうと考え始めたのが店頭のシャッターをメッセージボードにする方法です。

 

でかい貼り紙

 店頭にはこんな張り紙がしてありました。これは日本一でかい「プロフィール」です。

店主てっちゃん プロフィール

41歳 8月1日 A型

いずみ幼稚園→旭小学校→葛城中学→商大堺高校→桃山学院大学→2社会社員勤務も続かず。その後、学生時代に5年間働いた「とと仁」さんが縁で独立

 

お酒を飲めない店主がお店をやっています。
食事のお客様も大歓迎です♪

 

できないことはありますが、自分にできることだけやっておかげ様で12年やってます。

実は・・いまだに調理師免許持ってません。

(社員は有資格者)お店をやるのに違法ではありません。

 

 

お客様インタビューのやり方

 さて、お客様インタビューにはルールがあります。

 

1.まずどんな人がいいお客様かを決めることが大事

 店主の早崎さんは、いいお客様を以下のように定義しました。

 

・私のことを親身になってお世話してくれるお客様

・イッキイッキと大声で騒ぐことのないお客様

・ご家族で楽しく過ごしてくれるお客様

・お友達を誘って何度も来店してくれるお客様

・私と気の合うお客様

 

 以上のいいお客様が来店した時には「大好きなお客様にだけインタビューをさせていただいております。よろしいでしょうか?」と相手の自尊心を高めるような言葉を添えて情報を集めることにしました。

 

2.質問することを決める

 ランチェスター法則では 客層の決定、商品の決定、エリアの決定と三大戦略を明確にする必要があります。つまり「いいお客様」=「客層の決定」になりますから、質問の回答を元に商品の強みと営業エリアの分析をするため情報を始めています。

 

 そこで、5つの質問内容を考えてインタビューをすることにしました。

 

・何がきっかけで当店に来ていただけましたか?

・なぜ このお店を選んでくれたのですか?

・一番気に入っている商品は何ですか?

・それはどんなところがいいですか?

・お住まいはどのあたりですか?

 

 以上の質問でインタビューを行ない具体的な情報を集めます。

 

 

3.いいお客様から集めた情報の共通点を見つける

 ここの店は住宅街と岸和田のビジネス街をつなぐ幹線道路に面しており、朝夕のラッシュには多くの車が行き来します。

 

・前を通りながらずっと気になっていた。

・毎回来たいと思っていましたが、なかなか入れず。

・スタッフもいい人達でとても気持ちがよく、食事ができました。

・てっちゃんの人柄

 

 などの共通項が挙げられました。

 

 また、いいお客様は近隣の3つの町からの来店が一番多いこともわかりました。

 

 これまでの事からいいお客様は近隣の方で通勤時に車の中から店を見て、ずっと気になっていたことや、入りにくい店だったということがわかったのです。

 

 そこで、でかい貼り紙を店頭に掲げお客様とコミュニケーションをすれば、親近感を持ってもらえると考えました。

 

 実際にやってみると、これが店の前を車で通る運転手やその家族の方に大好評で俺、同じ卓球部やったんやけど・・・と同級生や地元のかたが共感し、来客数が増えていきました。

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