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戦略・戦術

第九十六話 差別化したいなら、まずライバルを知りなさい

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは、1位づくり戦略コンサルタント佐藤元相です。
私はこれまで1300社を超える中小企業の経営相談に携わってきました。
その中で、多くの経営者から聞く言葉があります。
「差別化したいんです」
しかし、その次に必ずお聞きする質問があります。
「ライバルはどこですか?」
すると意外なことに、多くの経営者が答えに詰まります。
あるいは、「うちはライバルはいません」と答えられることもあります。


先日、勉強会である社長が「うちの地域に同業者が少ない。」そうお話しされました。しかし私は、その言葉を聞いて少し心配になりました。なぜなら、本当に危険なのはライバルがいることではなく、ライバルが見えていないことだからです。

 


お客さまは「業界」で比較していない

以前、ある地方の経営者の方々とお会いした時のことです。コンビニの店長が、「この地域はコンビニが少ないので競争は楽ですよ」と話してくれました。


確かにコンビニだけを見ればそうかもしれません。しかし、お客さまはどうでしょう。
昼ご飯を買う時、コンビニへ行く人もいれば、弁当店へ行く人もいる。スーパーへ行く人もいる。定食屋へ行く人もいる。あるいは家から弁当を持参する人もいます。


つまりお客さまは、「コンビニを選ぶかどうか」ではなく、「どこで昼ご飯を買うか」を比較しているのです。経営者は業界で競争を考えます。しかし、お客さまは目的で比較しています。ここに大きな違いがあります。

 


工務店のライバルは工務店だけではない

私は工務店の経営相談も数多く受けています。
「ライバルはどこですか?」と質問すると、「〇〇工務店」「△△ホーム」という名前が出てきます。しかし実際にお客さまの頭の中を見てみると違います。


家づくりを考える人は、
● 地元工務店
● ハウスメーカー
● 設計事務所
● 建売住宅
● 中古住宅
● リノベーション住宅
● 不動産会社の紹介先
● 親戚や知人の紹介先
などを同時に比較しています。


つまり工務店同士の競争ではありません。「理想の暮らしを実現する方法」そのものと競争しているのです。さらに最近ではInstagramやYouTubeの影響も大きくなりました。


若い世代は住宅雑誌よりもスマートフォンで情報を集めます。「平屋」「自然素材」「家事ラク動線」と検索しながら全国の施工事例を見る。すると地元企業だけでなく、遠方の住宅会社まで比較対象になります。知らない間に、スマホの中の会社とも競争しているのです。

 


リフォーム市場はさらに競争相手が増える

リフォーム市場になると状況はさらに複雑になります。
工務店だけではありません。


● リフォーム専門店
● ガス会社
● 電力会社
● ホームセンター
● 家電量販店
● 不動産会社
● インターネットの一括見積サイト
● さらには生協(コープ)まで競争相手になります。
● 例えば給湯器交換。


工務店に相談する前に、ガス会社から提案を受けて契約するケースも少なくありません。
内窓工事も同じです。電力会社が省エネ提案を行い、そのまま受注することもあります。


また、生協は奥様との信頼関係が強い。毎週顔を合わせる担当者から、「リフォーム相談もできますよ」と言われると安心感があります。工務店から見ると意外な相手ですが、お客さまから見れば立派な比較対象なのです。

 


ライバル調査をすると、戦う場所が見えてくる

ランチェスター戦略では、差別化の前にライバル調査を行います。
なぜなら、中小企業が勝つためには、まず「どこで戦うか」を決めなければならないからです。


ライバルは誰なのか。どの市場で強みを発揮しているのか。どんなお客さまから支持されているのか。それを知らずに差別化を考えても、的外れになってしまいます。


弱者の戦略は、大手と同じ土俵で戦わないことです。
● 価格競争をしない。
● 規模を競わない。
● 物量で勝負しない。


その代わりに、
● 客層を絞る。
● 商品を絞る。
● 地域を絞る。
● そして一点集中する。
これがランチェスター戦略の基本です。


差別化とは、他社と違うことをすることではありません。
自社が勝てる市場を見つけ、その市場で選ばれる理由をつくることなのです。

 


京都の町工場に見た「弱者の戦略」

京都の山﨑内装工業株式会社も、差別化に挑戦している企業の一社です。
同社は、織物ふすま紙や織物壁紙を製造する町工場です。


工場がある京都府木津川市周辺は、織物ふすま紙・織物壁紙の全国シェア90%を誇る産地として知られています。しかし近年は和室の減少により、ふすま紙市場そのものが縮小しています。


そこで山﨑社長は、「これまでと同じ市場だけを見ていては未来がない」と考えました。


工場を見学すると、その強みがよく分かります。壁紙づくりは単なる製造作業ではありません。温度や湿度によって変化する織物の状態を見極めながら、職人が微妙な調整を行っています。


紙と生地を貼り合わせる工程では、素材同士を時間をかけて「馴染ませる」という独自の考え方があります。その姿は、工業製品というより、日本の織物文化そのものを受け継ぐ仕事だと感じました。


ライバル調査を進める中で、自社が戦うべき相手は壁紙メーカーだけではないことに気づかれました。量産クロス、大手メーカー、海外製品との価格競争ではなく、設計事務所、インテリアデザイナー、自然素材住宅、富裕層向けリノベーション市場など、「質感や文化を評価してくれる客層」に照準を合わせたのです。


これはランチェスター戦略でいう客層の絞り込みです。


織物の立体感、素材感、高級感という他社には真似できない価値を武器にする。大量生産ではなく、文化で選ばれる市場で戦う。まさに弱者の差別化戦略です。


ライバルを知ることで、自社の強みが見えてくる。
そして戦う場所が明確になる。
山﨑内装工業株式会社の取り組みは、そのことを教えてくれる好事例だと感じています。



https://yamazaki-naisou.com/

 

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