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第50話 業態転換、そのひとつのヒントが…

北村森の「今月のヒット商品」

飲食業界に極めて厳しい状況が続いています。多くの都市で酒類提供の中止を余儀なくされ、また営業時間の短縮も求められています。

 

テイクアウト中心に業態を変えるといった形も模索せざるをえませんけれど、包材(容器)の手配も必要ですし、コストがかさむうえに販売価格は抑える必要があるので利益が出にくいという声も飲食店から聞いています。

 

この逆風を乗り越える方策を、私などが軽々しく語るのはおこがましいのですが…。先日、ひとつの事例に出合いました。それは飲食業界のみならず、他業界の皆さんにとってもヒントが潜んでいるかもしれないと感じ、今回はその話をお伝えすることにいたしました。

 

 

大阪での話です。居酒屋など7店を経営しているMAJIMAという企業は去年、売り上げが8割減。追い詰められた状況下で、ここは前向きにならねばと、一部店舗の業態の転換を決断しました。ご多分に漏れず、テイクアウトにも着手しましたが、その一方で、プリンを売り物にした昼間営業のカフェを今年4月になんばにオープンさせたんです。その名を「私のプリン食堂」といいます。

 

なぜプリンを? 以前から系列の焼き鳥店でデザートとして出していたプリンが人気だったのを思い出し、そこに活路を見いだした。つまり、やみくもに何かに手を出したわけではない。そこがまず注目に値すると、私は思います。

 

 

プリンを前面に打ち出す店というアイデア自体は、もう5年ほど前にチラリとはあったそうです。でもそのときには立ち消えとなった。

 

またその一方で、以前から、女性スタッフが結婚すると、生活のサイクルが変わるために相次いで退職してしまうという問題を、店長は強く感じていたともいいます。

 

で、ここからです。プリン専門店というアイデアと、スタッフの退職問題が、このコロナ禍のさなかに、店長の頭の中でピタッとつながりました。どういうことか。「お酒を提供しないプリンのカフェにして、昼間の営業に」すれば、「結婚した女性スタッフにも活躍の場を提供する」ということです。

 

そして、5年前にプリンのアイデアを出して、その後結婚して退職していた女性に再び声をかけました。

 

 

社内には反対の声もあったそうです。「居酒屋に比べると明らかに客単価の低いスイーツ専門店が、新しい収益の柱になるのか」というふうに…。でも、もともと自分たちが持っていた宝物(プリン)を生かそうと、店長と復職したスタッフの2人は頑張った。

 

去年の12月末に、社内を説得して、企画を通し、この4月にオープンさせます。

 

その主力商品は、大阪で人気が根づいているミックスジュースをプリンなんです。食べてみたら、単なるふわとろのプリンではなくて、果物のジュレがアクセントになっていて 食感の変化が面白い。この食感の調整には相当な苦労があり、完成したのは店がオープンする1週間前だったそう。

 

結果はどうだったか。開業した最初の日も次の日も、ミックスジュースのプリンは、用意した300個がそれぞれ全部売れた。その他のプリンも加えると2日間で3000個も捌けたそうです。3日目からも順調で、居酒屋だった前の店舗に比べて来店数は100倍、売り上げは30倍と成りました。

 

品切れを呼ぶほどの人気は続き、店内で作るだけではいよいよ間に合わず、7月にはプリンをこしらえるための専用拠点として、2号店も近くに開設しています。

 

 

なぜMAJIMAは業態転換をモノにできたのか。ここまでの話をまとめますと、3つのポイントがあるように思えます。1つは、もともとそこにあったものを活かしたこと。次に、店長が社内の反対にひるまず、危機的状況下にすばやく動いたこと。そして最後は、地元に定着していた存在(この事例ではミックスジュースですね)を巧みに取り込もうと判断したこと。

 

その結果、女性スタッフの離職問題解消という部分にも、答えを出せた。いや、「その結果」というよりも、会社が生き残れるかどうかという状況で、よくそうした打開策をすぐさま打ち出せた、という表現のほうが合っていますね。逆風のもとでも前向きな発想と議論が必要、ということがとても学べました。昼間営業しかできない業態にすることを逆手に取って、女性スタッフの力を生かそうと動いたわけですから…。こうした点もがまた見事な話であると感じさせますね。

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