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人間学・古典

第52講 「帝王学その2」
草創と守成といずれが難きや。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】

創業の時と、その後の守りの時ではどちらが困難か。



【解説】
『貞観政要』は、太宗(626~649)の死後50年ほどして史官:呉兢(ごきょう)により編纂されたものです。太宗死後の後継問題で混乱したため、名君の治世を後世の手本にしたいという趣旨で編纂されました。日本では、北条政子・徳川家康などが愛読したといわれています。


掲句は『貞観政要』の中でも最も有名な言葉の一つですが、以下に太宗と2人の臣下房玄齢(ぼうげんれい)・魏徴(ぎちょう)との問答を現代会話風に再現してみます。

  皇帝太宗 :「創業時の苦労と、その後の組織守成の苦労では、何れが困難か?」

  家臣房玄齢:「群雄割拠の騒乱を勝ち抜いての天下統一ですから、創業の時です」

  家臣魏徴 :「新王朝誕生時は前代からの騒乱が平定され、領民は新帝に期待し命令も行き渡ります。しかし天下の権を手中後は必ず我がままが生じ、領民に過度な賦役を課し、これが国の衰退の原因となります。だから守成の時です」

  皇帝太宗 :「玄齢は時には九死に一生を得ながら私に従い天下を平定したから、創業とするのももっともなことである。また魏徴は油断すれば必ず滅亡すると心配しながら、私と一緒に国の安定を心掛けてくれたのだから、守成とするのであろう」
 「しかし今は既に創業時は過ぎ去った。今後も守成の苦労を思ってお前たちと共に慎重に頑張りたいと思う」

創業時からの臣下の房玄齢と中途からの臣下魏徴の双方の顔を立て、感謝し、現状を断定し、今後の方針への協力を請う・・・名君の誉れ高い太宗だから可能な見事な采配です。


新五代史という書物に「盛衰の理は、天命と曰うといえども、あに人事非ざらんや」とあります。組織の栄枯盛衰は、個人の力が及ばぬ自然の恵みや災害・不況や戦乱の人為的な社会混乱・・・などの他力的な要因が多いといわれます。だからといって組織に携わる人間の弱さから生ずる盛衰の要因がないとは言い切れないのでは?・・・という疑問を投げかけた言葉です。
人間学読書会や会計事務所を通して凡そ35年間、多くの企業経営者の経営相談に乗ってきました。その結果感じたことは、多くの経営者は人並み外れた努力をする攻めの強さも持っていますが、一方では通常人よりも過信や傲慢に陥る弱さも持っています。成功のための永い努力の後にふっと気が抜けたスキに弱さが入り込みます。掲句の本意は、「草創か守成」の困難さの比較ではなく、創業成功者の「守成期の過信や傲慢への配慮」となります。
「幸運が成功を生み、成功が過信を生み、過信が傲慢を生み、傲慢が世間から見放される」(巌海)


逆療法といえなくもありませんが、小さな問題を意図的に傲慢な態度で対応し、その結果を体験してみることです。日常生活での高まる気持ちを鎮めるのが坐禅であるならば、意図的に失敗し過度の儲け心を鎮めることも、一種の経営上の坐禅となります。成功者だから傲慢が生ずるわけですから、これらに伴う失敗を先取りしようとする経営手法の一つです。
 

 

杉山巌海

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