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第31回 社員の幸せを考えるブレない経営とは?~事例:テルモ

オンリーワンで勝ち残る企業風土づくり

勝ち組と負け組が明確になる今、経営者の判断がブレると会社は、これから負け組に入ってしまうでしょう。しかし、経営者の判断が理念を軸に、ブレなければ、会社は、生き残り、勝ち残ることが可能です。

なぜなら、先行きの見えない日本で現場は、経営の判断が常にブレない会社なら、その会社を信頼して“ついていこう”と思い、顧客の声に耳を傾け始めるからです。

会社は、永続する必要があり、永続させるには儲からなければならず、そのためには、顧客の声を聴き、必要とされる会社になり、利益を生み出すことが不可欠です。

経営者は代わりますが、変わらぬ経営理念を軸にブレない経営を実践し、会社の風土を築けば、現場が一つとなり、顧客になくてはならない会社には何が必要か?探り当てることができるのです。

そこで30回連載を終わり、今回からは全3回で“企業風土”をキーワードに会社が企業風土をどのように経営理念とリンクさせれば顧客を創造できるか?を、現場士気を向上することで売り上げをアップさせている会社を事例と共に解説いたします。
 
~日本的経営理念は、会社を生き返らせる!!~
テルモは、今や日本の医療機器メーカー(体温計で有名)でトップの地位を築いていますが、80年代の後半には成長に衰えが見え始め、90年代の初頭には3期連続で、連結決算の赤字を出していました。
が、同社を当時社長(富士銀行出身)へ就任した和地氏(現会長)は、経営理念に立ち戻った施策を実践し、会社を生き返らせます。
和地社長がその時手をつけたのは、日本的経営理念を軸とした、それまでのワンマン型の経営体制と米国的経営手法による企業風土の改革でした。
 
~理念に立ち戻れば、“人”が活きる、その経営方針とは?!~
医療機器トップメーカーの同社が当時14期連続の増収と8期連続の経常増益を途絶えさせた原因は、長期にわたって好調が続いたための現場の組織へのぶら下がりであり、それは現場が指示されたこと以外は何もしない「指示待ち体質」の風土が醸成されたからでした。
 
そこで、社長が実施した企業風土改革とは?
 
経営理念の中核となる「志」=ミッション、すなわち「社会的な使命感」を会社の部長以上の幹部社員に再度明示し、企業理念を再認識させ、経営合宿を通して、彼ら自身の間でオープンな議論を重ね、社長が提示した下記の企業風土改革5つを実行するための新しい経営方針を打ち出させました。
 
<テルモの企業風土改革5つ> 
・指示待ち体質
・セクショナリズム
・評論家体質
・時代や社会状況を見ようとしない
・人を使い捨てする
 
<テルモのミッション・・存在意義(目的)>
「医療を通じて社会に貢献する」
私たちは、医療の分野において価値ある商品とサービスを提供し、
医療を支える人・受ける人双方の信頼に応え、社会に貢献します。
 
テルモの幹部社員は、「医療を通じて社会に貢献する」という経営理念=ミッション(使命)を再認識することで、売上げがダウンしたのは?
企業風土(上記5つ)により会社が
→価値ある商品とサービスを提供していないからと理解
 
企業風土改革には、
現場社員の“自主性”が不可欠であると捉え、以下3つの経営方針を策定しました。
 
<テルモの新しい経営方針>
アソシエイト経営:一人一人がこの会社の主役という気持ちで働く
 
人を軸とする経営:人は財産である
 
グローバル経営:高く広い視野から物を見る
 
~社員を定義すれば、経営方針は現場仕様になる!!~
経営方針は、幹部社員だけのものとなり、多くの場合、現場には浸透せず形骸化してしまいます。
同社は経営方針を社員全員が意識し、実践できるものにするため、経営方針の1つであるアソシエイト経営のアソシエイト(employee(従業員)ではなくassociate(働く仲間)として捉え)という言葉を、風土改革のシンボル的な共通言語にし、その意味を以下のように義することで、現場の社員一人ひとりが当事者として自主的、主体的に仕事に取り組もうという意識付けを現場に施したのです。
 
<テルモのアソシエイト=社員の定義>
・テルモが好き
・お互いを尊重
・自分の役割を認識
・一流を目指す
 
~経営理念がステートメントになれば、社員は同志になる!!~
同社は経営理念「医療を通じて社会に貢献する」を今後会社が成長するための目的=存在意義とすべく揺るぎないものにするため、全社的なワーキングチームを編成し、テルモ5つのステートメント(将来にわたって大事にしなければならない価値観や、社員が判断し行動する基準)を以下のように定め、現場が日々の行動に意味と意義を感じることで、現場の一人一人が日々の行動を通してベクトルを(を)一つにするアソシエイト(同志=社員)となる意識改革を実施しています。
 
<テルモ5つのステートメント>
・開かれた経営
私たちは、開かれた経営を基本とし、適正な利潤の確保・還元につとめ、リーディング企業にふさわしいグローバルな事業発展を図ります。
 
・新しい価値の創造
私たちは、科学的思考と時間と柔軟な発想を重んじながら、価値ある商品とサービスを創造し、より深くお客様のニーズに応えます。
 
・安全と安心の提供
私たちは、誠意とこだわりを持って技術と品質の向上にとりくみ、安全と安心を提供します。
 
・アソシエイトの尊重
私たちは、個の尊重と異文化の理解を大切にし、アソシエイト・スピリッツのもとに、未来にチャレンジする風通しのよい企業風土をつくります。
 
・良き企業市民
私たちは、公正な企業活動と環境への責任ある行動を展開し、信頼される企業市民をめざします。
 
<顧客志向=経営理念が売上げにつながる仕組み
施設「メディカルプラネックス」とは?>
同社は2002年神奈川県中井町に「メディカルプラネックス」という施設を完成。
「プラネックス」とは、練習、熟練という意味の「プラクティス」と別館を意味する「アネックス」とを融合させた造語で、この施設は医師や看護師など医療関係者が、高度な医療機器を用いる際の訓練を行えるように設計され、プラネックスの内部には、実際の病院さながらの手術室が用意されており、そこには最新鋭の医療機器と医療トレーニング用の専用機器が完備。
この訓練施設を病院関係者などに開放することで、医療技術の発展に寄与し、この施設の存在は、顧客(医療関係者及び患者)を志向することが、経営理念実現へつながり、その成果が売上げをもたらす流れを以下のように構築しているのです。
 
~顧客志向→経営理念実現→売上げへの流れ~
現場が医療を支える人(医師や看護師など医療関係者)との交流を深め、現場が仕事の質を上げ、その信頼に応えれば、その結果、現場の声により開発された商品が、医療の分野において価値ある商品とサービスになり、それは受ける人(患者)の信頼に応え、社会貢献を通して、売上げとなる
 
テルモはこれからの時代は、人や企業としての意思や志、すなわち「いかに生きるか、何を目指して生きるか」という美意識が重視されると確信し、企業風土改革を通じて、経営理念を軸に現場士気向上へと進んでいるのです。
 
テルモHP
http://www.terumo.co.jp/company/about/policy.html
 

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