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第8話 「花色鉛筆」に学ぶ、”埋もれた技術”の活かし方

北村森の「今月のヒット商品」

その見た目はひたすら可憐。もしこれを贈ったら、喜んでくれる人が多そうです。一方で、この商品の開発背景をひもとくと、ビジネスの示唆に富んでいる。今回はそんな色鉛筆の話です。
 
 
画像に目を凝らしていただけるでしょうか。普通の色鉛筆に見えて、決してそんなことはない。まずはその断面に注目、です。
5本のセットなんですが、それぞれの色鉛筆、断面の形状が異なるのがお分かりになるかと思います。桜色、紅色、蒲公英色(タンポポの黄色)、常磐緑色(松や杉などの緑)、そして桔梗色。それぞれの断面が、色通りの形になっています。う〜ん、芸が細かい。
 
 
これ、「花色鉛筆」という商品です。色鉛筆が5本入ったセットで1944円ですから、まあ単純に考えれば、そう安くはない。
芯だけではなくて軸の部分も、おのおのが同色です。先に触れたように、軸の断面が草花の形をかたどっています。1色ごと、軸に刻まれているギザギザの深さや本数は異なっており、、ちゃんと花なり葉なりが、そこに表現されている。桜色の鉛筆は、その断面も桜の花。紅色の鉛筆では梅の花……。
仕掛けは、それだけはないんです。芯を削ったら、どうなるか?
 
 
削りかすが花びらみたいに綺麗! なんだこれは……。その断面の形によるだけではなくて、軸まで全部同色だから、こうなるんですね。
これはまさに「贈る人も、もらった人も、語れる色鉛筆」だったというわけです。
 
「花色鉛筆」は、TRINUS(トリナス)という東京のベンチャー企業の手になる商品です。同社は、デザイナーとものづくり企業を結ぶことを目指していて、「花色鉛筆」では、地方企業が持っていた技術をもとに、1人の男性デザイナーが発想をなし、複数の地方中小企業が成形や組み立てを担って、商品として完成させたといいます。
 
もう少し詳しく説明しますね。まず、TRINUSが、全国各地の企業のなかに埋もれている技術、あるいは企業自体が何に使えばいいのか悩んでいるような持て余し気味の技術を発掘します。次にその情報をTRINUSが開示。それを見たデザイナーが商品を発想し、TRINUSに提案する。で、TRINUSが採用すれば商品化となる、という仕組みです。
 
企業の技術と、デザイナーの発想を、TRINUSが「とりなす」という話。ここで大事なのは、商品化のリスクはTRINUS自身が担うという点にあります。生産自体は各地の企業に委ねるものの、TRINUSはファブレス(生産部門は持たない)のメーカーとして、開発から販売までの責任を有する。つまり、TRINUSは単に事業者同士をつなげるだけでなく、最終的なプロジェクト責任者としての責務を負う姿勢を貫いているのですね。だからこそ、プロジェクトの座組み(責任体制の明確化)はしっかりとなされて、誰が何をすべきかがはっきりする。複数事業者が名を連ねる協業では、これ、極めて重要なポイントです。そこが曖昧なために瓦解するプロジェクトは、少なくないですからね。
 
「花色鉛筆」の場合、廃棄古紙を用いた新素材を作りあげた。それを知ったTRINUSがデザイナーに情報開示し、この商品が出来上がりました。新素材でなく、従来の木や樹脂だったら、この「花色鉛筆」は生まれなかったでしょう。中までしっかりと着色され、しかも簡単に削れる素材はそうないから。
 
初回生産分は1年も経たずに売り切ることができ、現在では、派生商品である「雪色鉛筆」というのも登場しています。

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