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第9回 四万温泉(群馬県)本当に気持ちいい温泉は「内湯」にあり

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■露天派? 内湯派?

 「露天風呂がないと温泉に入った気がしない」という人は多いかもしれない。たしかに、非日常感を味わえる露天風呂は、温泉の魅力のひとつだ。湯船から絶景を拝める露天風呂なら格別だろう。

 しかし、「いい温泉は内湯(内風呂)にあり」というのは温泉好きの間では定説である。温泉の質という点に限れば、露天風呂よりも内湯のほうに分があることが多いからだ。

 近年オープンした宿を除けば、もともと温泉宿のベースは内湯である。バブル期以降の露天風呂ブームの盛り上がりとともに、内湯の外に露天風呂を設けた宿は少なくない。「露天風呂がない宿は魅力がない」と評価されてしまったからだ。

 だが、湯船には適正サイズというものがある。温泉の湧出量が増えない限り、湯船を満たせる温泉の量には限界がある。男女の浴場に露天風呂を新設すれば、その分、使用する源泉の量は増える。
 
 すると、何が起きるか。源泉を循環させて使いまわす。あるいは、内湯で使用した源泉をそのまま露天風呂に再利用することになる。もちろん、そうすれば温泉の鮮度は落ち、入浴感は低くなってしまう。そのため、せっかくの露天風呂でも、入ってみたらがっかりということは少なくない。

 また、もともとスペースのないところに露天風呂をつくったりするので、開放感がまったくなく、かえってわびしい気持ちになることもよくある。だからこそ、本物の温泉を堪能したいなら、内湯に注目すべきである。

 

■温故知新の温泉街

 内湯でも、露天風呂に引けを取らないほどの感動を得られる温泉宿はある。群馬県・四万温泉の「積善館」も、内湯自慢の宿のひとつ。

 四万温泉は、江戸時代から病気療養をする湯治場として栄えてきた温泉地。「四万の病を治す」ことから、四万温泉と名づけられたという説も残るほどだ。今でこそ若い女性に好まれそうなデザイナーズ系の温泉宿も増えているが、昔から療養を目的とした人々が集まる素朴な温泉街だった。

 新しい時代のニーズを取り入れつつも、湯治場の雰囲気をいまだ残しているのが四万温泉の魅力。射的やスマートボール、老舗のそば屋などが並ぶ「落合通り」という素朴な風情の路地に、当時の名残を垣間見られるのもうれしい。

 また、四万温泉は昔から、「日本三大胃腸病の名湯」に数えられており、温泉街にも飲泉所が数カ所設けられている。わずかな塩味と苦味を感じるくらいで、あまりクセがないのが特徴。グビグビと飲める。

 

■ジブリ映画のモデルになった歴史的建造物

 温泉街の奥にある積善館を目指して歩いていくと、映画『千と千尋の神隠し』のモデルになったとされる朱色の橋と、300年以上も前、元禄4年に建てられた木造の本館が出迎えてくれる。玄関まわりは建築された当時のままだという。県の重要文化財に指定されている。

 その隣には、積善館が誇る「元禄の湯」の建物。こちらもまた、木造の和風建築が歴史の深さを感じさせる。

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 元禄の湯の扉を開けると、そこはすぐに浴場。脱衣所と湯船の間には段差があるだけで仕切りは何もない。なによりも感動的なのは、「大正ロマネスク風」と称される洋風の浴室。白壁にアーチ型の窓がいくつも並ぶ。太陽の光が窓からさし込み、透明な湯がキラキラと輝いている。神々しさを覚えるほどだ。

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 広い空間に規則正しく並んだ5つの小さな湯船には、無色透明のピュアな湯がかけ流しにされている。ダイレクトに注がれる新鮮な源泉は露天風呂では体感できない気持ちよさがある。美しい浴室を眺めながら、やわらかな湯に抱かれていると、疲れたきった心と体がみるみる癒されていくように感じられる。

 積善館には風情を感じられる露天風呂もあるのだが、毎回、内湯の元禄の湯に入り浸ってしまう。ああ、やっぱり私は内湯が好きだ

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