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発想の転換で市場を創造する「《爆伸》食品マーケット」
~可能性は無限大、自ら新たな市場を創り出せ!~
人の食習慣はそう簡単には変わらない。ましてや、年を重ねれば重ねるほど保守的になり、新しい食べ物や食べ方にはなかなかなじめないものだ。
そのため、急速に進みつつある少子高齢化によって、日本の食品市場は成熟化し、あとは縮小の一途をたどるだけと思われがちだが、さにあらず。
万年変わらずジリ貧だと思われていた食品市場の中で、固定化したマインドセットをスイッチすることによって、従来になかった新たな市場を創造する「《爆伸》食品マーケット」が存在する。
以下、3分野の《爆伸》事例をご紹介しよう。
いつの世も可能性は無限大だ。自ら新たな市場を創り出そう!
●爆伸するオリーブオイル市場のマーケットクリエイター・日清オイリオ
既に飽和状態と見られていた食用油市場に、オリーブオイルをはじめとする健康オイルで風穴を開け、着実に業績を伸ばしているのが、業界のリーディングカンパニー・日清オイリオだ。
20世紀末、カロリー摂取を減らすためには食用油の使用を控えるべきだという報道が一部でなされた。
しかし、同社は逆転の発想で、健康・美肌に良い食用油として、1996年から本格的に、オリーブオイル「BOSCO」を市場に投入した。
現在も日本国内のオリーブオイル市場でトップシェアを誇る同ブランドを中心に、年々、市場を拡大している。「BOSCO」は2016年に発売20周年を迎えたが、さらに前年同期比50%増という勢いだ。
街場のレストランでも家庭においてもイタリア料理が一般化したことに加え、オリーブオイルを多用する地中海食を摂る地域では心筋梗塞などの心臓病やガンの発症率が他地域より3分の1以下と低く健康に非常に良いとするアメリカの大学の研究結果がテレビ番組などでたびたび取り上げられたこともあり、右肩上がりの成長を続けてきた。
日本における家庭用オリーブオイル市場は、約5年で倍近くの350億円に達している。
食用油市場全体における売上比率も25%を超え、キャノーラ油(菜種油)の30%に肉薄している。
一般的に食用油はGMS(スーパー)などで特売の対象商品にされやすく価格の下げ圧力が強いのに比べて、オリーブオイルはもともと価格が高く、健康イメージから値崩れしにくい。
ココナッツオイルをはじめ人気を呼ぶ健康オイルの先駆けとして定着したオリーブオイルだが、さらにマーケットのパイを大きくすべく、日清オイリオでは新たな市場創造策を次々に打ち出している。
同社の今村隆郎社長が「良質のオイルを摂取したいというニーズが高まっており、テーブルユースの提案が重要になる。BOSCOの魅力を伝え、“かけるオイル”の楽しみ方を広げて行きたい」と述べている通り、焼いたり炒めたりするための調理用調味料としてのみならず、卓上に置いて食品にそのまま振りかけて食べる食中調味料として大きな広がりを見せつつある。
オリーブオイルを摂ると調子がいいので、我が家でも、サラダやお刺身のカルパッチョなどにかけるだけでなく、最近は豆腐や納豆にもかけて食べている。
風邪の予防に、毎年、秋から冬にかけては、イタリア・トスカーナ産の季節限定のオリーブオイル「ピエトラ・コロンビナ」と合わせているが、搾りたてのエキストラバージン・オリーブオイルの果実味とフレッシュな香りが不思議と和食ともマッチする。
あるいは、バニラアイスにオリーブオイルと岩塩をかけると大人の男性も食後のスイーツとして楽しめる。
また、日清オイリオでは、独自の「酸化ブロック製法」で国内の工場で一本一本ていねいにボトルに充填することでフレッシュな美味しさが長持ちするよう改善したり、世界各地のこだわりのオリーブ農園から産直の風味豊かなオリーブオイルを限定販売で届ける「オリーブクエスト」を発売するなどしている。
健康オイルの先駆けとなったオリーブオイルは、産地・風味にさらにこだわったワンランク上の市場がさらに拡大して行くに違いない。
●10年間のフリーズ後、6年続けて過去最高額を更新中のチョコレート市場
日本のチョコレート市場は、2001年以降、10年にわたってフリーズしていた。
しかし、2011年から少しずつ増加に転じ、2014年から新たな高度成長期に突入している。
チョコレートの小売市場は、2014年には前年同期比7.5%の成長を遂げ、2015年は3.7%増加して5040億円の最高額を記録、初の5000億円の大台に乗った。
2016年の市場規模も6%増えて5359億円となり、6年連続で過去最高額を更新。10年間で1000億円以上も拡大している。
同じお菓子でも、ガムの売上が11年連続で減少しているのと真逆になっている。
全体的に見れば、近年、健康志向から、日本も含め先進国においては、砂糖を使用するお菓子の市場は縮小傾向が続いている。
ガムの方がチョコレートより砂糖の含有量も少なく、健康志向にマッチした商品が多そうだが、消費者の意識に逆転現象が起きているのだ。
固まっていたチョコレートの市場に、この10年間、新たなマーケットをクリエイトしているのは、高価格帯の「プレミアム・チョコレート」と機能性を前面に打ち出した「健康チョコレート」だ。
高級チョコレートは小腹が減った時の間食に「どうせ食べるなら」と選ばれる嗜好品として女王の座を獲得している。女王と言うのには、王とのマッチングで伸びているからだ。
昨今、会社員やOLが仕事の合間に口にするために、コンビニエンスストアやスーパーで購入する飲食品の王座にあるのはコーヒー飲料だが、このコーヒーのお茶菓子、言わば、おつまみとして高価格帯の「プレミアム・チョコレート」がコーヒーとセットで伸びている。
間食時における、コーヒーと高級チョコレートのコラボ市場はますます成長しつつある。
また、チョコレートが、今や「お菓子」ではなく、「健康食品」として認識され出したことが市場爆伸の要因だ。
NHKの「ためしてガッテン」など、テレビの健康情報番組が、カカオ・ポリフェノールの機能性にスポットライトを当てたことで、「健康チョコレート」は品薄になるほど追い風は吹いている。
2017年2月、NHKの朝の情報番組「あさイチ」が、「知られざるチョコレートの底力」と題して、カカオ70%以上の高カカオ・チョコレートを毎日食べ続けることで、便通の改善、認知症や高血圧の予防に効果があると紹介した。
放送直後から高カカオ・チョコレートの売上が爆発的に増加し、中には前日比1000%増というお店もあるというほどで、店頭では品薄状態が続いている。
「プレミアム・チョコレート」と「健康チョコレート」が牽引するチョコレート市場はさらなる発展の可能性を秘めている。
●10年にわたり凍り付いたアイスクリーム市場が成長に転じた訳とは?
アイスクリームの小売市場も、1994年をピークに、10年にわたって凍り付いていた。
ところが、2004年から再び成長に転じ、近年、年々増加傾向にある。2015年の売上は4630億円となり、初めて4500億円の壁を突破した。
夏の日中の最高気温が25℃を超えるとアイスクリームが売れ出し、30℃を超えると氷菓が売れると言われる。
地球温暖化で暑いを超える熱い夏日が多くなって市場が伸びているのかと思えば、実はこのところ夏は天候不順の日が多く、アイスの売上が記録更新を続けている理由は他にある。
新たなアイスクリーム市場創造のキーワードは「大人」と「冬アイス」である。
20世紀にはアイスクリームと言えば、「子どものおやつ」の定番だったが、今や「大人の自分へのご褒美スイーツ」となっている。
子どもの頃に駄菓子屋でアイスクリームを買って食べていた40代・50代・60代の男女をターゲットにした、大人仕様の甘すぎない高級アイスクリームが売れているのだ。
また、20代・30代でも、お風呂上りに口にしたい飲食品で、アイスクリームがビールを上回るなど、頑張った自分へのご褒美としてアイスを食べる男女が少なくない。
価格に敏感な主婦層より流行に敏感な若年層の方が、新商品や限定商品をより積極的に試してみる傾向もあり、高級アイスクリーム市場の開拓の余地はまだまだある。
一方、業界を挙げて取り組んで来た「冬アイス」の強化で、夏の季節商品だったアイスクリームが、通年市場となりつつある。
アイスクリームの市場は、春夏と、秋冬を比較すると、従来は3対1、あるいは4対1ほどの開きがあった。
ところが、近年、インターネットの急速な普及も手伝い、世代を問わず、家で過ごす時間が長くなっており、冬にも温かい部屋で濃厚な「プレミアム・アイスクリーム」をじっくりと楽しむ人が増えている。
国産アイスクリームの上代は100円が上限と言われていたが、200円前後のプレミアムな「冬アイス」が、手を替え品を替え、市場に投入されている。
氷菓の売上が大きく夏に偏っているのに対して、「プレミアム・アイスクリーム」は春夏と秋冬の売上の差がほとんどない。
今後、メーカー各社は、「大人の自分へのご褒美スイーツ」や「冬アイス」を、コンビニエンスストアやスーパーといった従来からの小売店での販売に加えて、自動販売機やネット通販、カタログギフトなど、新たな流通チャネルを通じて販売することで市場のさらなる拡大を目指している。
人口が減ろうが高齢化が進展しようが、市場には常に無限の可能性が広がっている。
硬直化したマインドセットを変えることで、自ら新たなマーケットを創造しよう!
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