必要な機能を必要な位置に
私たちメンバーは、真に必要な役割だけを実現できる方法がないかを検討しました。余計な役割や機能を次々となくしていきます。必要以上に余裕があったり、いつか使うかもしれないからと、保管してあったり、そのうち処分する予定のものが残っていたりしていました。それらをなくすと、非常にシンプルになります。
さらに私たちは、効率の良い配置を考えていきます。食材や食器、人の移動は、極力短いほうが効率的なのです。移動距離が長くなると、事故や問題が発生しやすくなってしまいます。だから、できるだけ短くするほうがよいのです。そして、仮置きが必要な配置も問題で、保管・調理・洗浄などの作業が交錯しないような配慮も必要です。
あらゆるケースを想定して、問題がないかを徹底的に検証します。ポイントは、厨房に真に必要な役割が果たせているかどうかです。見落としがないように、原寸大の厨房を作成して、何度も検証を重ねていき、修正と調整をしていきました。その時の問いかけは、「誰のため?何のため?」です。
そしてついに、厨房の面積が半分以下になりました。新しい厨房は、食材の搬入や保管がスムースで、食器の洗浄や保管も独立しています。調理する人は、ほとんど歩くことなく、すべての調理ができる、画期的な厨房が完成しました。
メカニズムを明確にする
利益を最大化するためには、メカニズムを明確にすることが大切です。今回取り上げた事例は厨房でしたが、どのような業務にも、この原理は変わりません。ポイントは、業務のメカニズムです。利益を生み出す仕組みと言っても、顧客を満足させるカラクリと言っても良いものです。改善するときは、メカニズムを明確にしてから取り組むことなのです。 時代は、変化していきます。緩やかに変化する時と、急激に変化する時があります。その時々で、経営者は、古い手段を手放して、新しい手段を手に入れる必要があります。手放すときや、手に入れるときに、多少の努力と勇気が必要かもしれません。
経営とは、自動車を運転するようなものです。道は市場で、自動車が会社です。そして、運転手は、経営者です。道は、常に変化しています。道のせいにする前に、まず道に応じて、自動車を上手に操ることです。時代の先を知り、自分の状況を見て、取るべき行動に専念するのです。憂慮している時間も、躊躇している時間もないかもしれません。
この連載を最後までお読み頂き、ありがとうございました。この記事が、利益が思うように増えないと感じておられる経営者に、考えるきっかけになることを願っております。そして、私たちが力を合わせて、経済活動を活発にしていき、輝く未来を次の世代に遺していきたいと願っております。
■横田尚哉(よこた ひさや)氏/ファンクショナル・アプローチ研究所 代表取締役社長
GE(ゼネラル・エレクトリック)の改善手法をアレンジして10年間で総額1兆円分の公共事業の改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現させた実績を持つ業界屈指のコンサルタント。「誰のため、何のため」をもとに、ダイナミックな問題解決手法を駆使し短期間で数億円から数十億円の工事費を浮かせる実績が評判を呼ぶ。氏の改善手法は業種や規模を問わず、コスト削減はもちろん、品質向上や業務効率化、新事業開発、企業変革にも応用でき、コンサルティングサービスは半年待ち。
著書に『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』(ディスカバー)、『問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門』(ディスカバー)、『ビジネススキル・イノベーション』(プレジデント)、 『第三世代の経営力』 (致知出版社)、『問題解決で面白いほど仕事がはかどる本』 (あさ出版)等多数。音声講話「儲かる会社をつくる技法」(日本経営合理化協会)、「業務の見える化」(日本経営合理化協会)も出講。
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