自社の社員給与が、年齢や勤続年数の上昇とともに、賃金もそれに応じて上がっていく“年功賃金”の傾向が強いようなら、直ちにこれを改めて、実力主義の賃金制度の確立を目指さなければなりません。ここでいう実力主義賃金制度とは、決して過度な競争を煽るということではなく、責任ある仕事や品質の高い仕事を地道に積み上げてきた社員が、「正しく評価され、処遇としても報われている」と思える賃金・処遇体系のことを指しています。
そして、実力に応じたメリハリある賃金処遇を実現するには、社員にとって分かりやすい評価制度を確立し、公平で納得性ある評価を実現していかなければなりません。優秀な社員ほど、その仕事ぶりを「認められたい」という願望を強く持ち、経営者からの責任ある評価を望んでいます。納得性ある評価制度の確立は、仕事への動機付けとしても重要な枠割を担っているのです。
職務に対する評価といっても、評価に対するイメージは人それぞれです。業績、成果、能力、適性など、評価対象が違えば、当然に帰結するところも違ってきます。私たちが重視すべきポイントは、「社員のやる気を最大限に引き出す評価」であり、処遇には反映させることのできる評価ですので、発揮された仕事力全体(プロセスおよび成果)に目が向けられなければなりません。
さらに、一生懸命に努力して大きな成果を上げた者と期待される成果を出さなかった者に対して、その違いが明確に判るような差をつけることも必要なのです。仕事の評価とは、仕事の成績に応じて「明確に適正な差をつけること」といっても良いでしょう。
社員のやる気を引き出し、人材育成や能力開発に直結する評価制度であるためには、公正であり、透明性があり、納得性が高いものであることが求められます。
「公正」とは会社のルールとして評価方法が定められているということであり、「透明性」とはその確立されたルールが社内に公開され、正規の手続きに従って運用されていることを指します。そして、最も重要なのが被評価者の「納得性」が高いことです。
この「納得性」を高く保つためには、評価者が被評価者に対して「何がどう良かったか、どこがどのくらい悪かったのか」をフィードバックし、評価結果(SABCD)や処遇に関して責任をもって説明できなければいけません。
評価に関しては客観性を高めることが大事だといわれますが、数値化できる業績指標を幾つも並べたからといって、どの指標を重視するのかは、結局評価者である人の判断によるため、かえって主観の入る余地が大きくなったりすることも考えられます。基本的に仕事が評価対象であるため、その難易度や責任の重さに対する判断にも個人差は出ますし、主観を一切排除するなどということは不可能です。
では、納得性のある評価制度を確立するためにはどうしたらよいのでしょうか?
次回は、この設問に対する答えを探るために、評価対象と評価手法(相対評価と絶対評価)との関係、評価制度を運用する上でのチェックポイントなどを取り上げてお話します。