勝ち組と負け組が明確になる今、経営者の判断がブレると会社は、これから負け組に入ってしまうでしょう。しかし、経営者の判断が理念を軸に、ブレなければ、会社は、生き残り、勝ち残ることが可能です。
なぜなら、先行きの見えない日本で現場は、経営の判断が常にブレない会社なら、その会社を信頼して“ついていこう”と思い、顧客の声に耳を傾け始めるからです。
会社は、永続する必要があり、永続させるには儲からなければならず、そのためには、顧客の声を聴き、必要とされる会社になり、利益を生み出すことが不可欠です。
経営者は代わりますが、変わらぬ経営理念を軸にブレない経営を実践し、会社の風土を築けば、現場が一つとなり、顧客になくてはならない会社には何が必要か?探り当てることができるのです。
そこで27回連載を終わり、今回からは全3回で“ポジショニング”をキーワードに“どの顧客”を対象にアプローチすれば新しい顧客を創造できるか?を、売れる仕組みを経営理念とリンクさせ、現場士気を向上することで売り上げをアップさせている会社を事例と共に解説いたします。
~理念を経営軸にすれば判断は常にブレない!~
回転寿司「スシロー」を展開するあきんどスシローは「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」を企業理念に掲げ、現在業界ナンバーワンの売上を達成しています。
が、同社の起源は創業者の清水氏が自身のお店「鯛すし」(カウンター型立ち寿司)で職人がにぎるこだわりの寿司を提供し、繁盛したことをきっかけに、<職人がにぎる従来の寿司は高価で日常的に大衆が口にすることができない>という事情を何とかして改善したいと思い、1984年に回転寿司1号店<すし太郎>を出店し、多くの人に同店で提供する品質のネタを安い値段で提供したことから始まりました。
結果、従来のすし店には来店しなかったファミリー層が押し寄せ、同社は、最大限の品質にこだわった寿司を提供することで、現在「回転寿司業界売上世界一」、「売上高2,000億円」を目標に成長を続けています。
同社の強さは、一言で言うと理念実現へと向かうブレない経営判断(下記)が存在することです。
理念「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」の実現は「おいしいものを安く提供する」ことで多くのお客様に支持されなければならない。」
~理念が既成事実を壊し、成長を後押しする!~
“職人が握った寿司はおいしいが、ベテランと新人の違いで味にバラつきがあり、且つ新人の職人を一人前に育てる手間と費用は、寿司の値段に上乗せされている。”
この既成事実を理念「うまい寿司を腹一杯」実現を御旗に掲げることで壊し、あきんどスシローは1992年寿司ロボット導入を経て、おいしさの品質の標準化を具体化。<商品やサービスが多くのお客様に支持されなければならない>という経営判断はここにきて揺るぎないものとなります。
そしてその後もロボットが作った寿司だけで運営していく店は繁盛し、店舗展開を拡大するためには人だけに頼らない寿司ロボットの存在は不可欠となっていきました。
~理念に沿った“こだわり”が仕組みを生み出す!~
回転寿司では店舗ごとの売上は、廃棄率により変化し、<お客さまが欲しいネタが、欲しいときに流れてくる>ことが売上アップのポイントになるため、従来は店長の予測に頼り、予測ができる店長がいるお店と、そうでないお店とでは売上に大きな差が出ていました。そこであきんどスシローは、すべての皿にICチップを取りつけ、レーン上に設置のセンサーで一枚一枚の皿の動きを追うことで、単品ごとの販売実績をリアルタイムで把握、その情報をデータベース化し、全店舗で共有し、この予測を仕組み化したのでした。
職人の店長の暗黙値に頼っていたお店の売上が、ICチップによるIT化で店舗の売上を一定に保つことができ、店舗の標準化(350メートル移動したネタは自動的に廃棄し、つねに新鮮なネタがレーンに流れるようにしても損益分岐点が読める)が可能となり、多店舗展開しても利益を生み出すことができるようになったのです。
回転寿司、寿司ロボット、ICチップ、これらは職人がにぎる寿司を提供する上でこれまで必要ではなかったものです。しかし、理念「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」の実現に向かう上では、<商品やサービスが多くのお客様に支持されなければならない。>こだわりの寿司の品質は経営判断に正しさのお墨付きをつけたのです。
~品質を4つに具体化すれば現場は“こだわり”を理解する!~
あきんどスシローは理念「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」の実現に向かうために<商品やサービスが多くのお客様に支持されなければならない。> こだわりの寿司の品質を同社のコアコンピタンス(中核となる強さ)にし、以下の5つの基準で現場に浸透させ、現場の理解を促進しました。
<商品やサービスが多くのお客様に支持されなければならない>
こだわりの寿司の品質とは?
●原点は一軒の寿司屋である
=“味”の鯛ずしが原点
●仕入れにこだわる業界最高水準のネタ
=すし屋がルーツのうまいネタの目利き
●うまさの理由基本へのこだわり
=米酢100%のしゃり、職人の醸したこだわりのしょうゆ、まぐろやたまごの基本ネタのうまさ
●世界初、回転すし統合管理システムを導入
=まぐろは350m以上まわったら自動廃棄
●選べる楽しさ80種類を提供
=一度で食べきれないおいしさ
あきんどスシローは、「日本一の回転寿司を目指す」ことで「2020年までに売上高2000億円達成」という目標を明示しています。そして、それはオンリーワンのポジション(理念「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」の実現は「おいしいものを安く提供する」ことで多くのお客様に支持されなければならない。)で現場ベクトルが一つになることでもありのです。
■あきんどスシローHP
http://www.akindo-sushiro.co.jp/company/