最近、 大廃業時代という言葉で、後継者がいない中小企業の大幅増加について話題になることがあります。それに関係して
平成30年4月1日から事業承継税制が大きく変わりました。
その事実だけ知ってはいましたが、 今回、TKC全国会の平成30年4月新設、事業承継税制Q&Aが送られてきたので早速読んでみました。
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいうわけで、国税庁のホームページに事業承継税制特集があり、今回の改正についてもわかりやすく書いてあります(国税庁のホームページ事業承継税制特集)
平成30年4月1日からの事業承継税制改正を簡単に書くと、
中小企業であれば、一部の業態を除いてその株式の贈与・相続にかかる税金が100%猶予されるというもので、平成30年4月1日から35年3月31日までに「特例承認計画」を都道府県に提出→税務署への届出という手続をへて事業承継に係る株式の後継者への贈与・相続の税負担が実質0円として猶予されるというものです。
もちろんさまざまな条件や必要な手続はあるわけですが。
資産超過で黒字会社。具体的に言えば株式価値が5千万円以上の事業承継ならこの制度は十分に役に立つと思われます。
例をあげて書けば、年間売上4億円で現金・預金は5,000万円程度だが所有不動産である工場が時価2億円 でどうみても2億円近くの資産超過、会社の株式価値もそれ以上であると考えられた場合、
事業を後継者が承継し株式が譲渡されれば、相続なら数千万円から1億円超の税金が承継者に課税されるわけです。
このような場合はこの制度を利用して事業承継をしたほうのが、てまひまを考えても得と思われます。
しかしながら、中小企業の事業承継では、債権者である銀行からの借入の保証債務も引き継ぐことを要請され、そのことも考えて承継するかどうかが決まると考えられます。
図で描くと下記のイメージで考えていただければよいかと思います。
それではこの税制が十分に役に立つ会社とはどんな会社かというと、
後継者がいることを前提として、黒字、大幅な資産超過。5千万円以上の株式の価値があり、銀行借入がないか、あっても月商の2~3か月程度の中小企業ということになります。
過去の金融機関での経験からいえば、その条件に当てはまる企業というのは
よくて40~50社に1社、最悪500社に1社の割合だと思います。
この制度によってほんの一部の企業の廃業は防げますが、
大廃業時代を防ぐことはできないと思います。
アメリカのように相続税の基礎控除が高く、さらに事業承継の優遇を与えるのが本筋だと思うのですが、日本の政策立案と企業をとりまく環境ではこれが限界なのだと思います。