倒産件数が2016年は8,446件で1990年以来の低水準と東京商工リサーチが発表していたようですが、M&Aの買収側にまわってみると、今はいいけれど、倒産予備軍企業はとても多いように思えてなりません。
経営者の能力が維持されていて営業をしていれば、中小企業、とりわけ同族会社はそれなりに継続していけるのですが、経営者が高齢になり新規融資に制限がかかった場合や、後継者がいなくて廃業せざるをえないケースが見うけられるようになり、それら企業がやむなくM&Aの買収される側として仲介会社の在庫になっているようにみうけられます。
企業の財務内容にもよりますがそのうちのかなりの売れ残り企業が買収してはいけない企業で、売れ残ったままあと何年かたつと経営悪化から倒産し始めると予想できます。
もちろん、後継者がいないことや経営者の高齢化でも、倒産ではなく廃業という選択肢も選べますが、主として資産超過の場合に限られます。また、資産超過であったとしても場合によっては倒産という事態もありえるのです。
では、どんな状態であればM&Aで買収してもらえるのか、倒産を回避し手仕舞うことができるのかについてバランスシートという視点から書いてみようと思います。
M&A仲介会社のエグゼクティブサマリーには簡単なバランスシートが記載されていますが、それは決算書に書かれている数字であって、じっさいの数字とは違います。たとえば棚卸資産が1億円あると記載されていてもじっさいの価値は、多くのケースでそれ以下になります。とりわけ業歴の長い企業の場合、棚卸資産の価値は現実とは異なるものとなります。
また、中小企業では不動産などの簿価はじっさいの価格とは異なります。これらを修正して実際の価値にひきなおしたものが修正バランスシートと呼ばれています。
この修正バランスシートを前提に考えると買収可能な企業、事業承継しても継続可能な企業が理解できるようになります。下記2つの修正バランスシートの企業がこれに該当します。
いずれも資産超過の企業ですが、流動資産>負債(ケースA)の企業は、黒字ならM&Aで買収する企業としては適していますし、また、それなりの株式の評価額(買収額)がでてきます。
問題は2番目の流動資産<負債(ケースB)で、流動資産で負債全額を返済できない以上、固定資産の中身について精査する必要がでてきます。精査といっても価値を算定するだけでなく、その固定資産が収益を生み出すことにおいて必要なものであるかどうかを考えるということも必要になります。下記(ケースB)の場合、収益を生み出すためにどうしても必要な固定資産が1.1億円なら、その固定資産は事業継続中は売却できず、資金需要には借入で対応することが多くなるからです。
また、こういった企業を事業承継をした場合、2代目社長の手腕しだいで、(不動産担保に依存した)債務が増加し経営が悪化するケースも出てきます。
単純に決算書をそのままの数字で考えるのではなく自分の頭で考えて修正バランスシートを作ると、企業の実態が見えてくるものです。