リベート・キックバックによる不正行為が行われると会社は大きな被害をうけることになります。
しかしながら、いくつかの点を注意深くチェックしていけば、案外簡単に不正行為の真相をはあばくことができるものです。
システム開発、土木・建設など、高額のものを扱う業種でリベート・キックバックによる従業員への資金還流は、会社に対する不法行為、刑法上の詐欺、背任、業務上横領に該当します。
よくニュースでこれらの事件が報道されますが、これらの行為が一般的な商習慣の範囲内で行われていて適切な税務処理がされていればまだしも、 その資金が一従業員に還流するとなると、はっきりとした不法行為となってしまいます。
では、これらをどのようにみつけるかについて例を示しながら書いてみます。
まず、これらの不法行為は見積書・請求書を見ただけでその兆候がわかることがあります。
昔の話ですが、見積書・請求書をみただけで、「コレ、あやしいな」と感じて確認すると、やはり不正なキックバックだったということがありました。
そのときの請求書ですが、下記のようなもの(内容は変えてあります)だったのです。
もちろん、1枚の請求書だけを見て「リベート・キックバック」の可能性を見分けることなどできず、過去の同一下請けからの請求書などと見比べて、違和感のある差異を見つけるわけです。
この場合、赤の破線部分が同一先からの他の請求書とは異なり、これを根拠として、明細で基礎工事、リース費、資材費、人工などを確認することでリベートの存在を確証することになりました。
いったい何が他の請求書と違ったかというと、右上の請求書no.は他のものでは数字しか使われていなかったのに、この請求書だけに末尾に英字が使われていたのです。
また、左下破線の「\1,500,000を含む」といった文言は他のものには見られず、隠れた意味をもっていると推測したわけです。
これらは請求書ではなく、見積書にのみ出現することもある隠れたメッセージです。
じっさい、このレベルで不正が判明することも多いのです。
キックバックを仕掛ける側の会社についても、書いておきます。
キックバックは元請会社従業員への資金の還流などですが、キックバックを受けた側の従業員はそれらを確定申告することはありませんので、「相手方を明かせない」リベート・キックバックとして経費処理する会社もあります。しかし、これはごり押しで、きわめて不適正な 経理処理として損金算入を認められないことになります。
また、キックバックを仕掛ける側の会社は本来より多い利益(水増し利益)を得ているので、キックバック相当の経費を水増ししないともろに課税されることになります。
そこで、不正をしている会社の多くでは架空の外注費を計上することになります。しかも、それらの多くは同一案件の外注で処理することが多く、税務調査がはいると、容易にそれらがあばかれてしまうわけです。
ちなみに、キックバックによる一時的な水増し利益分の増加を、どうして、仕入の水増し増加ではなく、外注費の水増し(架空外注費)でカバーするかというと、仕入の増加だけでは利益に影響がないからです。それは粗利益の算出式(下記)からも一目瞭然にわかることです。
架空仕入れしたものが製造に使われることは考えづらいので、在庫計上され、在庫は製造原価に含まれないので、利益の増減に影響しないのです。
会社のおカネに関することは不正も脱税もロジカルに行われることが多いので、それを反証することも簡単にできてしまうのです。