決算前に利益を調整できるほど優秀な中小企業というのは極めて少ないものです。
㈱あみやき亭のように決算日が終わってすぐに短信を発表できるというのは、よほどストイックか計画的か小規模な企業以外では無理と考えたほうがいいかもしれません。
多くの中小企業では決算日経過後1か月近く経過してから、利益や税金がわかり、消費税額も確定するのが実情です。
それらの数字がでてきて始めて予想以上の納税額の多さに気づき、利益を調整しようと考え始めるわけです。しかしながら、決算日より後にできる利益調整は「減価償却」の扱いぐらいしか残されてはいません。
もっとも、現実的な話をすれば「決算賞与」で決算日後でも利益調整はできるし、実際にそうしている会社もありますが、厳密に言えば決算日以降に 決算賞与の金額を決めた場合は税法の規定を満たしていないことになります(注1)
多くの中小企業では通常の経理入力は早くできたとしても、棚卸で時間をとられ、早急な決算作業の完了の足かせとなります。
決算日より前にできる利益調整と、決算日後にできるものを図にするとこのようなものになります。
ところで、決算日後、利益の確定の作業で1ヵ月程度かかった場合で、納税額があまりに大きいと気づいた中小企業では
脱税という選択肢を選ぶ会社も中にはあります。この脱税は利益を故意に減らす作業の為、商品をただ仕入れればいいというものではないことは理解いただけると思います。
下記の式を見ればわかるように仕入れたモノが売上原価となって、始めて損金に認められるからです。
ところが、これらの工作をしている段階で決算日後1ヵ月が経過しています。
3月31日決算の会社であれば、4月30日に3月31日付けの請求書をください。納品日は3月中にしてくださいと共犯の企業に根回しができたとしても、いざ税務調査がはいり、製造業なら3月中にそれらが原価になったかどうかを納品書などをもとに調べられれば即座に脱税がばれてしまいます。
最終仕入原価法を悪用して3月31日にAという商品や材料を格安で仕入れた場合は、棚卸金額が減り利益が減るので節税ができてしまいますが、税務調査では納品日・実際の納品かどうかが調べられることがあります。
販売に関しても同じような方法があります。帳簿価格100万円の商品を10万円で売れば90万円の損失が出てその分利益は減ります。
ここまで、お読みいただいてご理解いただけたと思いますが、ある程度の利益・納税額が確定してから、「いくら利益を減らそう」と考えることで、脱税工作が開始されるので、つまるところ、決算月1ヵ月だけの売りと買いの請求書、納品書と棚卸表を精査すればほとんどの脱税工作がいともかんたんにわかってしまうのです。
(注1)
(使用人賞与の損金算入時期)
参照 第七十二条の三
No.5350使用人賞与の損金算入時期 参照