menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

経済・株式・資産

第99話 中小企業の事業承継(2)

あなたの会社と資産を守る一手

相続によって子供や配偶者が事業承継する場合、承継する側が考えるもっとも大き問題は資産超過か債務超過かということの見きわめであるように思います。もちろん相続による場合は事業承継のみならず、会社の経営を行っていた被相続人個人の資産の状況も含めてトータルで資産超過であるかどうかを考えることになります。

中小企業経営者である父親がなくなったとして、遺言が存在していて、そこに会社の株式、及び会社の銀行借入の保証債務(負債)は子供に相続させ、その他の財産(個人名義の預金・上場企業の株式・不動産など)は配偶者に相続させると書かれていれば、故人・父親と相続人たる配偶者、子供は基本的にはその遺言に従うことになりますが、会社の債権者である銀行などは必ずしも遺言に拘束されるわけではないのです。

さらにいえば、限定承認という制度はありますが、事実上、会社の株式は相続しないが、その他の財産は相続するなどという選択は不可能なのです。

したがって、会社経営者が亡くなった場合、残された家族は会社、個人の資産負債状況、会社の収益性などをトータルで考えて相続のしかたを決めていくのが合理的です。それゆえにその合理性に反する遺言があったとしたら相続はすんなりとは決まらないことになります。

そして、ここで問題となるのが「中小企業の銀行借入金では必ず経営者が連帯保証人になっている」ということです。なぜそれが問題になるのかといえば、「連帯保証は債務なのだから資産から控除されて相続財産がその分減るはずだ。したがって相続税もその分安くなる」という間違った考えにもとずいて相続、事業承継が決まっていくリスクがあるからです。

相続税法14条に保証債務に関係する規定があり、こう書かれています。

相続税法 第十四条 前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る(参照:e-Gov法令検索)

また、国税不服審判所のホームページにおいても「ー国税不服審判所(保証債務)ー請求人が被相続人から承継した連帯保証債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には当たらず、債務控除の対象とならないとした事例」という記述があります。これらを読めばわかるように、ほとんどのケースで保証債務は債務として控除されないのです。

つまり、多くのケースでじっさいの金額よりもはるかに多い資産が計上され、それをもとに相続税がじっさいよりも多く課税されるわけです。

そして、承継する会社に関しても同じようなことが考えられます。 
年間売上高5億円で、減価償却と営業利益の合計額が2千万円。純資産5千万円、借入金2億円といった内容の悪くない中小企業でも、その純資産の算定根拠となる資産の価値が正しい金額とは限らないのです。この場合、資産のほとんどすべてが現金・預金なら資産超過と考えても問題ないはずですが、会社は機械、土地、建物などの固定資産で資産をもっていることが多く、また売掛金などの流動資産にも回収に懸念のある資産が含まれていることもあるわけで、現実的な修正バランスシートを作れば債務超過になるケースも多いのです。

相続・事業承継にあたりこれらを総合的に考え最良の判断するとなるといっきにハードルが高くなります。
それゆえ、 経営者、それを承継する可能性のある人は財務の基本くらいは理解しておかないとうまくいかないと思われます。

第98話 中小企業の事業承継前のページ

第100話 中小企業の事業承継(3)次のページ

関連セミナー・商品

  1. 社長と会社の資産を守る法CD

    音声・映像

    社長と会社の資産を守る法CD

関連記事

  1. 第137回 経営とリスク(22)

  2. 第119話 経営とリスク(4)

  3. 第44話 破たんして、破産や民事再生を自動的に選ぶべきではない

最新の経営コラム

  1. 第184回 長野土鍋ラーメンたけさん小布施店 @小布施 ~世界に躍進する「ビーガン味噌ラーメン」

  2. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年5月8日号)

  3. 第328回【社長のリーダーシップ編⑤】リーダーに必要な4つの要素④「変化への対応能力」

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 社員教育・営業

    第5講 クレーム対応の結果、会社のイメージを作るのは、品質・サービス・契約内容で...
  2. マネジメント

    故事成語に学ぶ(49) 未だ木鶏(もくけい)に及ばず
  3. マネジメント

    危機を乗り越える知恵(15) 核戦争の瀬戸際、キューバ危機
  4. 製造業

    第180号 挨拶をあなどるなかれ
  5. ブランド

    <事例―13 テンピュールの「マットレスや枕」(B2BとB2C)>快適な睡眠を初...
keyboard_arrow_up