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第104話 習近平氏が長期政権に執着する3つの思惑

中国経済の最新動向

 今年3月11日、日本の国会に相当する中国の「全人代」は、憲法改正案を採択し、国家主席の任期制限に関する規定を撤廃した。これによって、習近平長期政権に道が開かれることになった。
 
 それではなぜ習近平氏は長期政権に執着するのか?彼はいったい何を狙っているか?結論から言えば、①高所得国入りの実現、②台湾統合、③米国超え、という3つの野心的な目標をぜひ自分の手で実現させ、毛沢東、鄧小平と肩を並べる功績を歴史に残したい思惑ではないかと思う。
 
◆2期目に「中所得国の罠」クリアへ
 習氏が狙う第一の目標は、二期目の任期が切れる2023年までに「中所得国の罠」をクリアし、高所得国入りを実現することだ。
 
 世界銀行の基準によれば、1人当たりGDPが12,616米ドルを超える国・地域は高所得国に分類される。2017年、中国のGDPは前年比6.9%増の82兆7122億元に上る。同年末時点の為替レート1ドル=6.54元で換算すれば、12兆6000億ドルに相当する。一人当たりGDPも9,000ドルを超え、高位中所得国に分類される。
 
 今後5年間、中国経済は6%成長とインフレ率2%を維持できれば、2023年まで1人当たりGDPは13,000ドル前後に到達することは可能だ。人口14億の大国で共産党一党支配のまま高所得国入りが実現すれば、史上初の出来事となり、画期的な意味を持つ。これは習近平氏の偉業とも言えよう。
 
◆3期目に悲願の台湾統合を狙う
 習氏が狙う第二の目標は、三期目終了の2028年までに台湾を統合し、悲願の中国統一を実現させることだ。
 
 毛沢東の功績は共産党支配の革命中国の樹立にあり、鄧小平の功績は改革開放の断行及び香港・マカオ返還の実現にある。習近平氏は台湾の統合を実現すれば、その歴史的な功績は毛沢東、鄧小平と肩を並べる。
 
 それを実現するためには、平和的統合が最も望ましいが、台湾側が拒否すれば、武力行使も1つの選択肢として視野に入る。
 
 今後10年、尖閣諸島をめぐる日中衝突、国境問題をめぐる中印衝突、朝鮮半島をめぐる米中衝突、南シナ海をめぐる中国・ベトナム衝突などの可能性はゼロと言えないが、極めて低いと思う。しかし、中台戦争の可能性が極めて高い。北京から見れば、台湾は内政問題であり、台湾独立は絶対に許さない。自分の任期内に台湾を統合し、中台分裂の状態を終結させたい習氏の願望の強さは、我々の想像を超える。
 
◆米国を凌ぎ世界一の経済大国へ
 今後10年間、中国経済が年平均成長率6%、インフレ率2%を維持できれば、2028年までに名目GDPは倍増の25兆ドル超に達する。同時期に米国が年平均成長率2%、インフレ率1%で試算すると10年後の米国GDPは25兆ドル前後にとどまる。
 
 言い換えれば、習近平政権3期目終了時点の2028年、中国経済は米国に追いつくか上回り、世界一のスーパーパワーとなる可能性が高いのである。
 
 もし上記3つの偉業を成し遂げれば、正真正銘の「中華民族の復興」を意味し、国民も習近平長期政権を問題視せずに支持するだろう。しかし、もし実現できなければ、個人独裁強化に対する国民の強い反発が予想され、政権の弱体化を招く恐れがある。向う10年、中国の命運を決める重要な歴史的な瞬間がやってくる可能性が高い。

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