menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

戦略・戦術

第110話 「私は声高に売上!売上!とは申しません」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

売上4000億円を7年前に達成していた日本マクドナルドが、今や2000億円と信じられない売上で、大赤字に転落しています。 マックだけではなくファッションのワールド、家電のヤマダ電器、液晶のシャープも業界のトップを走り、売上の大きさを誇っていた会社が人員整理だ、店舗縮小だと言っています。非常に悲しいことですね。
 
私は、売り上げ拡大中心による利益追求には危険があると、常々申し上げてきました。
 
今一度、前回も私の申し上げている経営課題は
 
売上至上主義  よりも  粗利益率(商品力)主義 営業利益主義に!
売上至上主義  よりも  総資産回転主義を考え、不良資産を減らせ
売上至上主義  よりも  労働生産性主義、システム主義で固定費を下げなさい
 
過剰時代には売り上げを上げる方法ばかり考えると陥穽に入ります。
 
なぜマクドナルドは大赤字に転落してしまったのか?
外食産業の雄たるマクドナルドが没落してしまっています。
 
2008年、今から7年前の売上は4064億円であったものが、本年の売上はなんと2000億円に半減しています。
あの超有名・優良と言われたマックの売上が半減してしまっているとは信じられないし、赤字が262億円も出るのは売上も半減すれば当たり前であろう…。
 
マックの成功要因は何だったのでしょうか?
ハンバーグを食べない私でも知っています。
 
(1) ワンコイン1ドルの低価格で食べられる牛肉たっぷりのハンバーグ
(2) システマテックなオペレーションで早く出され早く食べられる
(3) そして、ジューシーでおいしいハンバーグ
(4) 綺麗で清潔な店舗、店員、アメリカ文化への憧れ
ではなかったでしょうか?
 
アップルコンピューターから招かれた原田泳幸氏は、時の人として、各経営雑誌にやたらもて囃されていましたが、
「外食産業は他の産業と異なる。労働集約産業、味覚生産産業、アメリカ式MBA人材が来ていつまでも成功するのか!」
という疑問を持っていました。
 
「井上先生、原田氏は、マックは従来の直営店主義のそれを、FC方式に代えて店舗を売却しているから稼いだように見えるだけ!」といった経営者がいました。
 
(1) 売上拡大の多店舗展開
(2) 無軌道な安売り主義、59円のハンバーグ
(3) MDを日本式にやらず(業績悪化)、アメリカ本社の意見が入り、大ボリューム、
  高カロリー商品化のミスマッチ商品のMD
(4) フランチャイズ化により、管理の悪いFC店の増大
(5) 100円ハンバーグ、100円コーヒーによる悪質顧客によるファミリー客の離れ
(6) 綺麗で清潔な店は失われ、安心、安全、健康なイメージは 期限切れ鶏肉、異物混入で失われました。
 
外食産業は
・「良い商品」を維持するには顧客ニーズ吸収、開発、商品品質管理のための商品開発、そして人材確保と教育なのです。おいしい商品を提供する為には、直接原材料コストダウンは慎重になるべきであります。
・FC方式の怖いのは、自社の利益追求が先になり、客への奉仕貢献が忘れ去られる
・良好なオペレーション維持は 店員の士気の維持である
 
これを忘れた企業は たとえ業界の売上トップを走っていたとしても没落は早いのです。
 
挑戦とは何に挑戦するのか?
東芝は、各カンパニーに有無を言わせぬ『チャレンジ』を伝える場になっていたと日経は報じています。
 
「チャレンジ」→「挑戦」経営者がこの言葉の有無を口から発することは悪い事なのでしょうか?私もよく使います。
 
部下は常に「出来ない理由を考え、どうしたらできるかを考えない!」と私は信じています。
しかし、東芝は 高い売上目標に挑戦する命令のみであったように報じています。
損益計算書しか読めない、ところてん人事で上がってきた幹部が居れば、売り上げを上げるためにも、売掛金勘定残が増えようと在庫が貯まろうと、倉庫等設備投資が増加しようとお構いなしなのです。
 
部門長一人にまかせっぱなしにするのではなく、売上も増大、利益獲得困難期には “三人寄れば文殊の知恵”で 売上予算命令する人もやはり責任者。
なぜ、一緒になって考え、苦労しないのでしょうか?
大きな組織のトップは殿様なのでしょうか?
 
東芝は、08年リーマンショックで自己資本比率が8%台まで落ちてしまったのですよね。
“売上を上げて利益を獲得する”いいえ、キャッシュフローを良くする方法が大切だと東芝の幹部は考えられなかったのでしょうか?
 
東芝にしろソニーにしろ発明家のDNAを持つ企業です。
常にキャッシュフローで自由に使えるお金を生みだし、それを技術革新につぎ込む経営戦略が大切なのです。
東芝も9月になってやっと決算発表をし、今後はキャッシュフロー経営にいたしますと宣言しましたね。
 
売上を上げることが悪いとは決して言っておりません。
売上を上げるのは手段であって、経常利益(粗利益)を確保するのが目的なのです。利益を獲得するための売上が、利益を減らす売上になってはならないのです。しかし、切羽詰まるとこれが忘れられるのです。
 
売上の伸び < 粗利益高の伸び < 営業利益高の伸び < 経常利益の伸び
 
経営の原則、王道なのですが、売上至上主義の方々にはご理解していただけないのでしょうか?

 

第109話 「東芝不正会計問題と売上至上主義を考える」前のページ

第111話 「なぜ自社の資産再評価行為(オフバランス)等をして、節税を考えないのでしょうか?」次のページ

関連セミナー・商品

  1. 残席1枠 第38期「後継社長塾」

    セミナー

    残席1枠 第38期「後継社長塾」

  2. 井上和弘の経営の核心102項

    井上和弘の経営の核心102項

  3. 井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

    音声・映像

    井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

関連記事

  1. 第99話 「危機感をもっていました人手不足時代が 又 やってきました part1」

  2. 第18話 「企業永続のために」

  3. 第106話 「未だにオフバランス(会社資産再評価)をしないのですか?」

最新の経営コラム

  1. 第143回 仕事ができないことと「感じるパワハラ」

  2. 第171回 AIスプートニク・ショック

  3. 国のかたち、組織のかたち(34) フジテレビの失策の原因(上)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 社員教育・営業

    第58講 クレーム対応という仕事をやってるからには楽しむ!方法(1)
  2. 採用・法律

    第3回 『固定残業代制のリスクを知っていますか?』
  3. 経済・株式・資産

    第33回 逆風をチャンスと捉える経営:「ニトリホールディングス」
  4. マネジメント

    【楠木建のビジネスハック】仕事に追われず、仕事を追う「前始末」のススメ
  5. マネジメント

    後継の才を見抜く(1) 家康の”作り馬鹿”
keyboard_arrow_up