●遊休地の有効活用を望む土地オーナー
東京を始めとする大都市では、遊休地と呼ばれる空き地がかなり存在しています。土地を所有しあるいは購入しても、その有効活用が見出せずにいるためにそのままにしているケースや、土地は取得していてもそこに建物を建てる費用が不足するなど、遊休地が生まれる理由は様々です。
不動産は所有しているだけで固定資産税が課税されるため、更地のままでは資金が流出してしまいます。「用途が決まっていない遊休地を、とりあえず有効活用したい」と考える土地オーナーはかなり存在していました。
●既存駐車場の盲点を研究する
大都市に遊休地がある一方で、駐車場は慢性的に不足しているのが実情です。ですが既存駐車場は「有人管理」で「月ぎめか1時間単位」が大部分を占め、「深夜や24時間利用できる駐車場」など新たなビジネスモデルは存在していませんでした。過去の駐車場ビジネスは使い手都合でなく、駐車場を運営する企業側都合で行われていたわけです。
●3つの要素を勘案して生まれた新たなビジネス
当面利用する計画のない遊休地を有効活用したいと考える土地オーナーと、慢性的な大都市での駐車場不足。そして土地を購入するリスクを持たずにビジネス展開したいという企業の思惑が一致して誕生したのが、パーク24が展開する時間貸し駐車場の『タイムズ』です。
タイムズはこれまでの駐車場概念を打破し、
●遠くからでも識別でき、わかりやすく、人の印象に残るタイムズのロゴマークを開発
●10分単位という分刻みによる駐車場の料金設定
●自動精算機を無線ネットワークで結ぶトニックと呼ばれる無人の運営方式
●カーナビやネットから自社駐車場の位置や空き状況を確認でき、クレジットカードや電子マネーで精算できる仕組み
●会員制のよるポイント特典の付与
●時間帯別稼働状況に応じた駐車場料金の設定(料金は一律ではありません)
●「領収書が出ない」「駐車券をいれても出庫できない」などのトラブルを遠隔操作で対応し、監視カメラで不正利用者をチェック
といった独自のビジネスモデルを構築して、時間貸し駐車場の先駆者として認知されました。
遊休地のため、撤退や契約解除はあるものの、その数を上回る新規契約を取り付けられるよう営業活用を行っています。こうした手間を掛けているのも、既存駐車場を運営する企業にはなかった視点です。
現在同社ではスーパーやデパートなど企業や公共施設が所有する駐車場をタイムズに転用して収益化する法人向け事業や、マツダレンタカーを買収したことによるレンタカー事業とカーシェアリング事業にも着手しています。
<パーク24の事例に学ぶこと>
パーク24は既存ビジネスの問題点を「使い手側」と「運営者側」の双方から見直し、「大都市の駐車場不足という問題点」を加味して新たな事業として仕組みを考え出した。しかも「持たない経営」によって経営リスクを回避している。さらに駐車場の先駆的企業として取組んだことで、タイムズの存在は一躍社会に知られることになり、No.1ブランドを確立したわけだ。
◎酒井光雄著 好評発売中書籍