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健康

第3回 栃尾又温泉(新潟県)――猛暑の夏にこそ訪れたい「ぬる湯」

これぞ!"本物の温泉"

 猛暑に入る温泉 

 今夏もうだるような暑さが続いている。ここまで暑いと、「温泉」という言葉を聞いただけで拒否反応を示す人もいるのではないだろうか。「猛暑の日にわざわざ温泉に入る人の気が知れない」とさえ思うかもしれない。

 しかし、猛暑だからこそ、あえて温泉地に出かけることをおすすめしたい。温泉といっても一般的な温かい湯ではなく、「ぬる湯」である。

 地中から湧き出してくる温泉の泉温はさまざま。100℃を超える温泉もあれば、水のように冷たい温泉もある。「冷たいなら『温泉』ではないのでは?」と疑問をもつかもしれないが、昭和23年に制定された「温泉法」では、地中から湧き出す温水が25℃以上であれば温泉と認められる。25℃といえば、体感はほぼ水だが、法律上は立派な温泉なのである。

 

 人間の体温に近いぬる湯

 ちなみに、全国各地に2万軒以上の温泉施設があるが、適温とされる40℃に達していない温泉はたくさん存在している。そういう施設の9割は、ぬる湯のまま提供することなく、加温することで営業している。ぬるいまま湯船に注げば、「これは温泉ではない!」とお客さんからクレームが入るから。したがって、ぬる湯に入浴できる温泉施設はどうしても限られてくる。

私がおすすめする「ぬる湯」は、34℃~38℃程度の泉温だ。人間の体温と近いので、最初は冷たく感じるが、長時間浸かっていると、じんわり体の芯まで温まってくる。長風呂になれば、その分、温泉成分を十分に肌から吸収することもできる。そして湯あがりは、心地よい清涼感に包まれる。暑い夏には、もってこいの湯なのである。

新潟県魚沼市にある栃尾又温泉は、ぬる湯の名湯として知られる。泉温は約36℃。路線バスの終点に位置する小ぢんまりとした温泉街は、自在館、宝巌堂、神風館という3つの宿で構成される。

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 「外湯」文化

 栃尾又温泉がユニークなのは、基本的に宿泊客は宿の湯ではなく、共同浴場を利用すること。現代では各宿が温泉を引いているのが当たり前というイメージがあるが、昔の温泉地では、複数の旅館の宿泊客が外にある共同浴場に足を運ぶのがオーソドックスな入浴スタイルだった。これを「外湯」文化と呼ぶが、栃尾又温泉は昔ながらの伝統が残る貴重な温泉地だ。

 栃尾又温泉の「ぬる湯」は、加温も加水もされていない100%かけ流し。透明の湯はピュアそのものである。体を湯船に沈めると、最初は少々冷たく感じるかもしれないが、すぐに体になじむ。体温とほぼ同じ泉温なので、熱くも冷たくも感じない不思議な感覚に襲われる。湯と体の境目があいまいになる。心地よい一体感だ。

 そんな絶妙な泉温だから、どうしても長風呂になる。1回の入浴で2時間つかるのは当たり前。常連客の中には5時間入浴する強者もいるとか。ただ、無理は禁物。初めての人は、1日2時間入れば十分だ(それでも、他の温泉よりもかなり長く浸かることになるが)。

 入浴客のほとんどは目を閉じ、お地蔵さんのようにじっと動かない。湯口から注がれるドボドボという音だけが、浴室内に響きわたる。私もそうだったが、あまりに気持ちいいので眠気に襲われ、いつのまにかウトウトと夢の中へ。だから、気づいたときには、あっという間に1~2時間が経っている。

 幸い、歓楽街のない静かな温泉地である。ひたすら入浴して、おいしい地元のご飯をいただいて、たっぷり眠る。英気を養うにはもってこいの環境だ。
 
 数は多くないが、栃尾又温泉以外にも日本各地に「ぬる湯」は存在する。駒の湯温泉(新潟県)、下部温泉(山梨県)、岩下温泉(山梨県)、川古温泉(群馬県)、長湯温泉(大分県)、祖谷温泉(徳島県)などなど。残暑を乗り切るために、避暑地ならぬ「避暑温泉」を訪ねてみてはいかがだろうか。

第2回 別府温泉郷(大分県)―日本一の共同浴場天国前のページ

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