「自分が死んだあとのことは適当にやってくれ」という人がいれば、とことん家族 の心配をしていく人もいる。
そんな時世界の資産家にとって極めて重宝なのがトラスト(信託)である。
トラストの起源は、中世にまで遡る。そもそもは、長子相続制のイギリスで後継男子がいない場合、
国王による土地没収を防ぐ手段として利用されていた。
十字軍の騎士も荘園などをトラスティー(受託者、友人など がなった)に預け、
妻や幼い子供が資産を不当に奪られないようにしたという。
日本の信託は多少異なるが、信託法が改正されたことで今後税制が整備されればいろいろな面での利用が考えられる。
この中世に起源をもつ英米法下のトラストでは実に各種の仕組みが可能で、何歳になったら、どんな条件を満たせば
受け取れるか(結婚してまともな職業についている、一定の収入を稼げばそれと同額支払われるなど)などかなり
自由に設定でき、お目付け役をおくこともできる。
実際欧米の名だたる資産家といえどもあっという間に資産を枯渇させ、
最後に生活を支えたのは祖父が設定した信託基金だったという話はよく耳にする。
相続人になった途端、多くの人間がすり寄ってくる。
銀行、証券会社のみならず、友人からの投資話、親戚が起業するから金を貸してくれ、うんぬん。
自分で資産を作った人はある程度の判断力を持っていようが、金銭教育、投資教育なかんずく
人間教育が十分されていない相続人の場合は餌食になるのが落ちである。
そこで信託が威力を発揮するのである。
日本で、すぐ使える手段としては、遺産を生命保険の形で残し、それを年金形式で受け取るようにしておくのも一法であろう。
相続税軽減効果もあるし、多くの資産を一度に手にするわけではないから、何だかんだと迫られても断りやすい。
もちろん投資教育を、なかんずくファイナンシャルアドバイザーの使い方をみっちり教えておくのが一番いいのだが。
榊原節子
PHPのほんとうの時代10月増刊号に日野原先生、司葉子さんと私の対談が出ました。