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第31回 八ヶ岳連峰経営で着実に成長する食品スーパー「アークス」

深読み企業分析

年明け早々、イオンの「脱・総合」の記事が日経紙の一面トップを飾った。スーパー首位のイオンが不振の続く総合スーパー事業を抜本的に再構築するという内容。中核会社のイオンリテールが運営する全350店を今後5年ですべて改装し、店舗ごとに地域に合わせて売り場の専門性を高めた店舗にするというもの。
 
すでにこの20年ほど総合スーパーの退潮は明らかで、昨秋にもイトーヨーカ堂が不採算店舗の撤退を表明し、ユニーはファミリーマートに身売りする方向にある。その意味から言えば、内容自体は目新しいというわけではない。
 
専門家の目から見れば、総合スーパーがいかに厳しいかはすでに周知の事実だが、必ずしも世の中に十分知られているわけではない。図はイオン、セブン&アイの総合スーパーセグメントの利益と2大食品スーパーのヤオコー、アークスの利益推移を比較したものである。
 
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この15年間を見ると、ヨーカ堂の利益は右肩下がりであり、イオンもほぼ横ばいで、直近期はわずかながらも赤字となっている。一方、食品スーパーは2社とも利益は右肩上がりである。
 
この背景にあるのが我が国独特の加工食品卸売業の機能の高さであり、加工食品における卸売業の活用と自らの地域密着の生鮮、中食のマーチャンダイジング力で圧勝してきたのが食品スーパーであった。それゆえ、本部主導のマーチャンダイジングの効率性を武器とした総合スーパーは衰退したのである。イオンが今更、地域に合わせたマーチャンダイジングを打ち出しても、総合スーパーの強みである本部主導のフォーマットによるローコスト化の意義が薄れるだけで、根本的な解決にはならないと思われる。
 
さて、一方で地域の勝ち組食品スーパーにおいては勢力圏拡大がこのところの最大テーマであるが、2大食品スーパーのヤオコー、アークスの戦略は全く異なるものとなっている。
 
関東を地盤とするヤオコーは、地元の埼玉から首都圏各都県への自社での出店を強化している。一方、北海道を地盤とするアークスはM&Aにより、北海道から東北まで展開を進めてきた。食品スーパーの最大の強みは地域特性に合わせた生鮮、中食のマーチャンダイジング力である。そのため、特性の異なる地域への出店はリスクを伴う。
 
そこで、アークスでは被買収企業の特性を生かしながら、同社の持つノウハウも同時に浸透させる方式を取る。米国型のM&Aは親会社がトップに君臨する強権的な富士山型の経営スタイルである。しかし、食品スーパーの場合、そのような経営では地域独特の消費者ニーズやウォンツから距離ができて、経営の本質を見失ってしまう可能性がある。
 
そこで、富士山型の経営スタイルに対して、2,000m級の山々が競い合うように山脈を形成する八ヶ岳連峰のような経営スタイルが力を発揮できる。この「八ヶ岳連峰経営」は純粋持ち株会社傘下の事業会社の企業文化を尊重し、大幅に権限を委譲して事業会社の自主性を重んじる経営である。一方で、各事業会社のトップは泊りがけの研修で情報交換を行い、それぞれの良い部分を学び合うという仕組みも備えているものである。
 
ただし、それぞれの自主性を重んじるためには、それなりの経営スタイルを確立し、経営がうまく行っている企業、アークスの風土文化に合う企業だけと結びつく必要があり、やみくもに数合わせのM&Aは行わないスタンスを維持している。
 
このようにしてアークスはすでに5,000億円の売上高を達成して、将来的には1兆円を目標として、巨大食品スーパー連合を目指している
 
 
有賀の眼
 
M&Aのパターンでは、効率的な企業が非効率な企業を買収して、効率的な手法を浸透させることで収益力を高めるパターンが主流である。しかし、この手法は、地域密着型のマーチャンダイジング力が必要な食品スーパーではなかなか実現しがたい面がある。そのため、イオンやセブン&アイの傘下に入った食品スーパーがかつての輝きを失うケースがしばしばみられる。
 
それに対して、同社の八ヶ岳連峰経営は特に食品スーパーの経営には適した手法ではないかと思われる。各社の特徴を生かす経営統合ではともすると明確な方向性があいまいになるリスクがあるが、アークスの企業文化が明確であるゆえ、方向性もクリアになるためその心配はないと思われる。
 

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