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- 第70回 米個人投資家の反乱
2021年1月最終週に突如として、ビデオゲームやゲーム機を販売する実店舗を持つ小売大手の「ゲームストップ(GameStop)」や米映画館チェーンの「AMCエンターテインメント」などの株価が急騰し、これらを空売りしていたヘッジファンドが多額の損失を被った。
これは、今年に入って急速に利用者が増えたスマホ株取引アプリ・ロビンフッド(Robinhood)などを使っている若者たちが、350万人が利用している投機的な投資アイディアや戦略を話し合っているネット掲示板・レディット(Reddit)での呼びかけに呼応し、結束して少数の空売り銘柄に集中攻撃(買い)を加えた結果で、ある意味では10年前のアラブの春や、香港の抗議運動などと通じるものがある。
ゲームストップの株価は9日間で19.79ドルから380ドルへと1,774%高騰、AMCエンターテインメントも短期間に310%上昇し、市場で大きな力を持つヘッジファンドに一撃を見舞ったと称賛する声も聞かれた。
■SECの調査
ネット掲示板での「特定の個別株の価格つり上げに協力してほしい」という依頼は、相場操縦ではないかという批判も出ている。
米証券取引委員会(SEC)は1月最終週の株式市場の騒動に関する公式声明を発表、「株価の極端な変動は、投資家を急速かつ深刻な損失にさらす可能性がある」ことを認め、「市場の信頼を損なう」可能性があるという声明を発表している。
■ロビンフッド
今回、多くの個人投資家が使用したスマホ株取引アプリ「ロビンフッド」は、売買手数料が無料で株価の高い銘柄でも1ドルから投資できるサービスで、コロナ禍で自宅に籠もることが多くなり、デイトレードがやりやすくなったことや、経済対策の現金給付が入ったが、それを貯金はしても利息が付かないなどもあり、利用者が急増している。
■コロナバブル
市場がバブルの場合、最後に参入してくるのは個人投資家で、現在起きているのがそうした状況と見る向きもあるし、米S&P500指数は昨年3月以降66%上昇、株価は過去20年間で最も割高な水準付近にあり、今回の動きと20年前のIT(ドットコム)バブルは、一部の投資家が異常な値上がりを追い求めているという類似点も指摘されている。
世界の中央銀行によるコロナ対策支出や、低金利による「コロナバブル」が現在の株高を引き起こしていると考えているが、「コロナバブルの崩壊」はもう少し先だと思われる。
しかし、米国民の世帯所得ランキングの最上位10%の富(純資産)が全体に占める割合は、過去30年間で60.8%から70%に拡大、最上位1%のシェアは17.2%から26%へと急拡大しており、不平等の拡大は疫病、国家の崩壊、戦争などをきっかけに起こる大規模な「リセット」に直面して反転することがあるとも言われ、米個人投資家の今回の反乱はその一つの現れであることは確かだ。
======== DATA =========
●ゲームストップ(GameStop)株価
●AMCエンターテインメント
●レディット「r/WallStreetBets」掲示板
●ロビンフッド