来年2024年の干支は「甲辰(きのえ・たつ)」で「旧体制の殻を破って創造を伸ばす年」とされているが、「ChatGPT」により世界中で巻き起こっている「Gen(生成)AIブーム」は「新しい時代」に一歩踏み出すきっかけを作ったといえる。
「テレビ」「自動車」「パソコン」「インターネット」「携帯電話」「スマートフォン」などは、それらが多くの人々に利用されることにより、生活や仕事のしかたを大きく変化させた。
研究者などには使われていたインターネットも、1995年の「Windows95」の発売で多くの人が使うようになってから変化を生み出したように、何十年も前から行われていたAIの開発も「ChatGPT」の登場により一般の人が利用し始めたため、これから大きな変化を生み出しそうだ。
■多言語化
世界で現在使用されている言語は7,000以上といわれているが、「ChatGPT」のような多くのデータを学習させた大規模言語モデル(LLM)を使って文章を書かせる自然言語処理(NLP)が対応しているのは100言語以下で、英語での開発が最も進んでいる。
「ChatGPT」は主に英語で学習を進めており、Googleの対話型AI「バード(Bard)」は英語対応のみ、アマゾンの音声アシスタント「アレクサ」は9言語(非ヨーロッパ言語はアラビア語、ヒンディー語、日本語)と多言語化は進んでいない。
多くのサービスをデジタル化して運営することを目指すインドは、1万人以上に使われている言語が121あり、英語話者は11%以下のため、インド政府は複数の言語の大規模モデルを訓練すべく、データセット構築を強く推進している。
また、2000の言語があるとされるアフリカでは、草の根活動団体「マサハネ(Masakhane)」が自然言語処理(NLP)研究の強化を目指し、アラブ首長国連邦(UAE)では「ジャイス(Jais)」というアラビア語の新たな大規模言語モデルによる生成AIを開発している。
■EUのAI規制案
EUは12月はじめにAIの利用に関する包括的な規制案を決め、加盟国とヨーロッパ議会の間で暫定合意をしたが、市民の基本的権利を保護しながら、AIの可能性を最大限に活用するための適切なバランスを見つけることに多くの時間を費やしたとされている。
法執行機関による生体認証システムの使用を制限、ソーシャルメディアでの個人の影響力を測定するソーシャルスコアリングや、ユーザーの脆弱性を悪用するAIの使用を禁止し、規則に違反した企業には金銭的な罰則が適用される。
この規制案は、AI技術の急速な発展に伴う悪用を防ぎつつ、さらなる発展を促す方向性を示している。
2024年はAI技術、特に生成AIの分野での大きな進展が期待される一方で、その利用と発展を適切に管理し、調整するための国際的な努力も進みそうだ。
======== DATA =========
●インドAI言語翻訳システム・バシニ(BHASHINI)
https://bhashini.gov.in
●マサハネ(Masakhane)
https://www.masakhane.io
●UAE・ジャイス(Jais)
https://jais.pro